7年ぶりの改定となるBJCP(Beer Judge Certification Program)のスタイルガイドラインが公開されました。
http://www.bjcp.org/stylecenter.php
今回の改定ではIPAを明確に整理し、アメリカンワイルドエールのカテゴリも新設されました。
また、ミード(はちみつ酒)、サイダー(りんご酒)についても独立したガイドラインが制定されています。
スタイルガイドラインはホームブリュー(自家醸造)向けのものであることや、スタイルは時代とともに変化するということが明確に記載されています。これはスタイルガイドラインの位置付けとして特筆すべき点だと思います。
IPA
もともとイギリスで生まれたIPAは、イングリッシュIPA(12C)として、カテゴリ12のイギリス連邦の淡色ビール(Pale Commonwealth Beer)に分類されました。
それとは別にカテゴリ21としてIPAを独立させ、アメリカンIPA(21A)とスペシャリティIPA(21B)に分類しています。スペシャリティIPAにはサブカテゴリとして、ベルジャンIPA、ブラックIPA、ブラウンIPA、レッドIPA、ライIPA、ウィートIPAが定義されています。
更に度数の高いものはカテゴリ22 ストロングアメリカンエールとして、ダブルIPA(22A)に分類されています。
イギリス発祥のIPAとアメリカのクラフトビール文化の中でホップを重視したIPAを明確に区別したのは大きなポイントです。
American Wild Ale
ここ十年ほどでアメリカで盛んに造られるようになったワイルドエールがカテゴリ28として新設されました。
ブレットビール(28A)、複数の酵母で発酵させたサワーエール(28B)、野生酵母のスペシャリティビール(28C)のサブカテゴリが設けられています。
ブレッドビールは、ブレタノマイセス酵母で発酵させたファンキーな香りが特徴のビールです。
複数の酵母で発酵させたサワーエールは、ペディオコッカスやラクトバチルス、ブレタノマイセスなどをミックスしたもので木樽で寝かしていることの多いビールです。
野生酵母のスペシャリティビールは、フルーツやハーブ、スパイスなどを利かしたサワーエールです。
他に重要なポイントとして歴史的なスタイルをカテゴリ27に分類したことでしょう。
ゴーゼ(Gose)、ケンタッキーコモン(Kentucky Common)、リヒテンハイナー(Lichtenhainer)、ロンドンブラウンエール(London Brown Ale)、ピヴォ・グロディスキー(Piwo Grodziskie)、禁酒法以前のラガー(Pre-Prohibition Lager)、禁酒法以前のポーター(Pre-Prohibition Porter)、ロゲンビア(Roggenbier)、サハティ(Sahti)など、いくつかは再び造られるようになったものの、なかなか飲むことができないスタイルが収録されています。
これらの歴史的なビールからインスパイアされて新たなビールが生まれれてくるかもしれませんね。
さて、今回の改定では、スタイルをグループ化する方法としていくつかの「タグ」という概念が追加されました。
とても良い分類だと思うので紹介させていただきます。
Strength(アルコール濃度)
- session-strength(セッション):4%以下
- standard-strength(スタンダード):4-6%
- high-strength(ハイ):6-9%
- very-high-strength(ベリーハイ):9%以上
Color(色)
- pale-color(ペール):straw to gold(麦わら色〜金色)
- amber-color(アンバー):amber to copper-brown(琥珀色〜赤銅色)
- dark-color(ダーク):dark brown to black(濃茶色〜黒色)
Fermentation/Conditioning(発酵方法/保存方法)
- top-fermented(上面発酵):ale yeast(エールイースト)
- bottom-fermented(下面発酵):lager yeast(ラガーイースト
- any-fermentation(発酵方法によらない):ale yeast or lager yeast(エールイーストまたはラガーイースト)
- wild-fermented(自然発酵):non-Saccharomyces yeast/bacteria(サッカロマイセス酵母以外/バクテリア)
- lagered(ラガー):cold conditioned(低温保存)
- aged(エイジ):long conditioning before release(発売されて長期保存したもの)
Region of Origin(発祥の地域)
- british-isles(ブリテン島):England, Wales, Scotland, Ireland(イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド)
- western-europe(西ヨーロッパ):Belgium, France, Netherlands(ベルギー、フランス、オランダ)
- central-europe(中央ヨーロッパ):Germany, Austria, Czech Republic, Scandinavia(ドイツ、オーストリア、チェコ共和国、スカンジナビア)
- eastern-europe(東ヨーロッパ):Poland, Baltic States, Russia(ポーランド、バルト諸国、ロシア)
- north-america(北アメリカ):United States, Canada, Mexico(アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ)
- pacific(太平洋):Australia, New Zealand(オーストラリア、ニュージーランド)
Style Family(スタイル)
- ipa-family(IPA)
- brown-ale-family(ブラウンエール)
- pale-ale-family(ペールエール)
- pale-lager-family(ペールラガー)
- pilsner-family(ピルスナー)
- amber-ale-family(アンバーエール)
- amber-lager-family(アンバーラガー)
- dark-lager-family(ダークラガー)
- porter-family(ポーター)
- stout-family(スタウト)
- bock-family(ボック)
- strong-ale-family(ストロングエール)
- wheat-beer-family(ウィートビール)
- specialty-beer(スペシャリティビール)
Era(時代)
- craft-style(クラフトスタイル):developed in the modern craft beer era(現代のクラフトビール世代にスタイルが確立されたもの)
- traditional-style(トラディッショナルスタイル):developed before the modern craft beer era(クラフトビール世代以前にスタイルが確立されたもの)
- historical-style(歴史的なスタイル):no longer made, or very limited production(今では造られていないものや、ごく限られて造られているもの)
Dominant Flavor(支配的な風味)
- malty(モルティー):malt-forward flavor(麦芽の風味が優勢)
- bitter(ビター):bitter-forward flavor(苦味が優勢)
- balanced(バランスのとれた):similar malt and bitter intensity(麦芽の風味と苦味が同じくらい)
- hoppy(ホッピー):hop flavor(ホップの風味)
- roasty(ロースティ): roasted malt/grain(焙じた麦芽や穀物の風味)
- sweet(スイート):noticeable residual sweetness or sugar flavor(甘味が残っていたり砂糖の風味)
- smoke(スモーク):flavor of smoked malt or grain(燻製した麦芽や穀物の風味)
- sour(サワー):noticeable sourness or intentionally elevated acidity(酸味が際立っていたり、わざと酸性に傾けたもの)
- wood(ウッド):wood or barrel age character(木樽で寝かした特徴があるもの)
- fruit(フルーツ):noticeable flavor and/or aroma of fruit(フルーツの風味や香りを際立たせたもの)
- spice(スパイス):noticeable flavor and/or aroma of spices(スパイスの風味や香りを際立たせたもの)
いろいろな切り口でビールを見ることができるので、カテゴリに対するタグの追加はとても有用だと思います。
内容も多岐にわたっているので、これからじっくり読んでいこうと思います。
長い時間をかけてディスカッションを続けてまとめられた素晴らしい資料です。