IWCB「ユナイト・レッドエール」お披露目会&Meet the Brewer「ロコビア」

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2015/04/04 17:30〜 at WateringHole

2015/03/08の国際女性デーにおいて International Woman’s Collaboration Brew(IWCB; 国際女性共同醸造)に日本からはロコビアが参加して Unite Red Ale を造りました。
そのお披露目会と、ロコビアの醸造長・鍵谷百代さんをお迎えしてのイベント。

アメリカのPink Boots Society(ビール業界に携わる女性団体)が参加を呼びかけ昨年から始まった醸造イベントで、ビール醸造を通してクラフトビール業界で働く女性の地位向上を目指す取り組みです。


ロコビア
鍵谷百代

千葉県の佐倉市というところでビールを作っているロコビア醸造所の鍵谷と言います。
今日はよろしくお願いします。

今日は3/8の世界女性デーで、世界中でビールに関わる醸造している人だけじゃなくて、ビアパブで働く、こちらの成田さんや筒井さんなど、ビールに関わる女性たちが同時に造るイベントが昨年からはじまっている。
日本では、醸造所としては昨年も今年もロコビアでしか作れていないのですけど、神田にある蔵くらさんや池袋のvivo!さんの女性スタッフなども参加して一緒に作りました。

Unite Red Ale
今日提供しているのはリアルエールver.です。
簡単にビールの説明をすると、色味は赤く、炭酸ガスは弱いです。
苦味はIBU50。アルコールも5%ない。ぜひ飲んでみてください。
モルトは6種類。ホップは2種類。

まだまだリアルエールが日本で飲めるパブは少ないので貴重なビールです。

今日はUnite Red Aleを含め私が作ったビールが6種類飲み比べできる。

Uniteはレッドエールというスタイルで、Red Shamrockというビールもある。

Red Shamrock
レッドエールというスタイルでIBU25。
色味はこっちのほうが赤っぽい色をしている。
同じレッドエールでもアメリカンとアイリッシュスタイルという違いがあるので、飲み比べていただければ。

General Winter
季節醸造で作っているビールで、アルコールは7%。
最近あたたくなったのであれですけど、冬限定で作っていて、お燗をすると美味しい。
湯煎すると炭酸ガスが抜け出る。炭酸ガスが抜け出た感じが美味しい。
毎年作っていてボトルも販売している。次の冬、ぜひ試してみてください。

Immigrant Pilsner
限定醸造。
ピルスナーはよく飲めるビールだが、これはクラシックアメリカンピルスナーというすごくマイナーなアメリカンスタイル。
特徴は、麦芽じゃなくてコーンを1/4使っている。
もともとアメリカで産まれたビールで、うちの仕込みで言うと一仕込み100kgのうち25kgがコーン。
すごく飲んだ後味にコーンを感じる。
苦味はしっかりIBU35かな。アルコールは5.5%とそれほど高くない。
来年作るかどうかわからない。今日用意してあるものが最後の一樽。

佐倉スチーム
あまり日本では多く作られていないスタイルで、カリフォルニアコモンというスタイルです。
簡単に言うとアメリカのアンカー社が作るアンカースチームに似たような感じのビールです。
苦味はしっかりIBU40。苦いけど、麦芽の旨味を感じる。アルコールは5%。
通年醸造で作っていてボトルも常に販売している。

ここには無いけどフラグシップは、佐倉香りの生
ビアスタイルはジャーマンケルシュ。
2000年からずっと作っているフラグシップ。最初の一杯に飲んでいただけたら嬉しい。
苦味はIBU18で弱い。苦味はすごく弱くて、香りは華やか。
苦味とか香りとか微妙なところでバランスをとっているので、いろいろ飲んだ後に飲むとわからないので、最初に飲んでいただけたらと思います。

ロコビアの特徴は、私一人でやっていること。
そう言ってもみんな信じていただけないんですけど、私一人でやっている。
すべて製造から出荷から樽も洗うし瓶詰めも。
生産量が凄く少ない。といっても、ざっくりと一ヶ月あたり1000Lの出荷をしている。
出荷まで一ヶ月かかる。どんどん作っていかないといけない。

ビール作りは重労働で、一般的には女の人がやりたいという内容じゃないかなと。
でも、私は力仕事がやりたかった。つなぎを着て仕事をしたいと10代の頃から思っていた。

今はイベントにも精力的に出ている。今日はこちらでイベントをさせていただいて、5月に埼玉のけやき広場に2週目の後半に出ている。そこでしか飲めないビールも作っているので、ぜひ飲みに来てください。

普段は作ることばかりで、なかなかビアパブさんで飲む時間がとれない。
自分のビールがこういう雰囲気の中でタップから注がれたビールを飲むと別物に感じて、自分のビールなのに不思議な感じがする。

Q.他のブルワーとコラボなどやりたいと思っていますか?

ブルワリー同士とのコラボはやったことがないけど、Uniteはある意味コラボビール。ブルワリーさんとではなくてビアパブさんとのコラボビール。
ブルワリーとのコラボはやったことがなくて、あまり考えたことがなかった。

Q.色が薄いビールや赤いビールなどあるけど、今後はどういうビールを造りたいですか?

いろんなものを造っていきたいというのが前からあって、いろんなものを造ることで宝ものになる。データもとれるし勉強になるので、ありとあらゆるスタイルに挑戦していきたい。昔から思っていて、今もそう。
日本のクラフトブルワリーが二百何件あるうち、あえて他がつくっているものは造らずに、オリジナルなものを。あえて造っていないものを造っていきたい思いがある。

Q.ブルワリーでビールを作る前は、ご自分でホームブリューとかやっていましたか?

やっていないです。私の場合は。
最近の人たちわわからないけど、クラフトビールを作り始めたのは1998年。
当時の人たちは、別の世界から飛び込んだ人が多い。
もともと1998年創業だが、その前に千葉県初のビール屋さんがあった。
そのビール屋さんが、今いる工場のオーナーさんが別会社として作ったもので、房総ビールといいます。
そこが自分が始める一年前にスタートしていて、そこで一部研修という形で研修をさせていただいた。

最初スタートした一年は研修だけ。
1999年に設備を半分以上入れ替えた。
スタートした半年は濃縮麦汁。エキスで造っていた。
麦の粒を仕入れていなかったんですよね。麦汁になっていたものを原料としてやっていた。ホップも入っていた。
ホップも入れる必要がないし、濃縮麦汁をお湯で溶かして、酵母を入れるために急冷すれば終わり。仕込みは半日くらいで終わっていた。

その半年後に麦の粒から麦汁を自分で作ろうということで設備を入れ替えた。
今は仕込みに十時間くらいかかる。

Q.イミグラントピルスナーなど日本で飲めないスタイルを作っているが、日本ならではのスタイルとか地元でしか飲めないスタイルとかが重要になってくるのでは?
長い目で見たらこういうしていきたいなというのはありますか?

昔から思っていて、1回の仕込みで100kgの麦芽を使って500kLのビールができる。
100kgの麦芽カスが出るのですけど、三年くらい前までは近くに牧場があったので、乳牛の餌にしていただいたんですが、牛が減ってしまった。
ちょうど切り替えの時に佐倉市の農家が堆肥として使うようになった。
市内の農家に協力してもらって、麦とホップを造るようになった。
地元ならではの原料を使ってビールを造りたいと思っている。

もともと農家さんは麦を作れるが、ビールの原料は畑からとれる麦を製麦という工程を経て麦芽にする必要がある。
もともとサントリーさんと付き合いがあって、サントリーさんに製麦してもらえる。

Q.大手のビールメーカーがクラフトビールに参戦みたいなニュースを見るが、そういうことに対して、どう思いますか?

それは嬉しい事だし、日本でビール文化を盛り上げていくには、大手ビールだけではなくて、こういうクラフトビールがどんどん盛んになっていかないといけないということが大手ビールさんもわかってらっしゃるから、こういうことを言っているんじゃないかね?
大きい、小さいは関係ないですよ。ビールを作るのは同じです。そりゃ、設備は違うけど、かたや私一人で作れちゃうわけだから。
やっていることは一緒です。ビール造りは原料の麦も一緒だし、やることは一緒。
文化を広げていくためには、大きいところも小さいところも一緒になって、みんながひとつになっていかないとなかなか。

造るだけじゃなくて、飲んでくださるかたがいらっしゃらないと成り立たないし。
造っている側としたら確実に美味しいものを造らなきゃいけないし。
やっぱり、まずいものは誰も口にしたくないし。
いつも心に思って造っている。
造るからには最高のビールを造りたいと魂を込めて造っています。
よろしくお願いします。

Q.大きな失敗などありますか?

かなり廃棄しました。
ビールは簡単に廃棄できない。400L以上廃棄する場合は税務署の立会いが必要になる。
なんど税務署に来ていただいたか。

最近は失敗していない。

ほとんどは熟成タンクまでいって飲んでこれはだめだとなって捨てるものが多い。
また、発酵の時にデータをとるけど、数字がどこまで落ちるか。落ちが悪ければ廃棄する。

仕込みの時に麦汁を作る段階で、移動したいのに詰まってしまい捨てたときもある。
パイプに詰まっちゃって。最近は設備の特徴がわかるから対処方法があるが、最初のほうは機械の操作もわからなくて、どうしていいかわからない。
朝早くから仕込みをやっていて、ちょうど昼ごろに失敗だと捨ててしまったことが一回だけある。

原料も毎回作る分だけ仕入れるから余分がない。
原料をまた注文しなければいけないから、すぐに造れない。

だからもう、ある意味怖いものはないです。

工場なので危険物もいっぱい取り扱うんですね。
タンクの洗浄で高アルカリも使うし、仕込みの時のボイラーとか炭酸ガスなど危険なことはいっぱいある。

2011年の大震災のときも、タンクを洗おうとして、タンクにまたがっていたときにあの揺れがきた。
危険なことはいつおきるかわからないので、ボイラーマンを呼んで、炊いているときに揺れたりしたらどうすればいいのかと?対処方法を聞いた。
パイプが折れると蒸気が吹き出すので、すぐに逃げなさいと。
いつ何が起きても対応できるように働いている。
本当に神経を使う。

自分の工場が自分の部屋みたいな空間で、すごい無心になれる。
ビールのことしか考えていないんですね。

Q.ビールの仕込みとかやられる前に、もともと実験とか理科がすきだったとかありますか?

ぜんぜん専門的なことは勉強してなくてこの世界に入った。
最初の三年はいっぱい泣きました。凄く涙しました。わからないことだらけで。
房総ビールでは、ちょうど10歳年上の人が教えてくれて、マニュアルを丁寧に作ってくださったんですけど、それをつくってポンと渡されるだけで、言葉は少ないわけですよ。
これやりなさいという感じで。
そうは言っても、バルブの形とか付ける順番とか、タンクとか、わからないことだらけで。そのバルブを付けてみろと言われた時に、順番がわからずに涙が出てきた。

最初の三年は辛くて。でも、だんだんビール造りにはまっていきました。
21歳のときにビール造りに飛び込んだけど、最初の3年は涙しました。
それからだんだんはまっていって、楽しくなって。
20代をふりかえるとビール一色。

ビールを作る前はテレビが好きでドラマとかをよく見ていたのですけど、ビールを作り始めてからは疲れちゃって、心が疲れて家にかえったらバタンキューという状態。

もうビール一色ですね。

ビールを造っていて結婚もできたし。

Q.工場の見学はできますか?

あえてはやっていないですね。日々いろんな作業に追われているので。
お取引さんとか、これからビールを取り扱うという人には都合をつけて来て頂いたりしている。

今の工場を立ち上げた創業のかたが下野酒店の社長。
いまでもそこの酒屋で販売してもらっている。

嬉しいですね。千葉県のかたが来られてらっしゃる。

Q.イングリッシュなモルトを煮だしたビールが多いと思うのですけど、テクニカルなもので多くなったのか、鍵谷さんがすきだからか多くなったのか?

どっちかっていうと、ホップよりかはモルトよりのほうが好きか嫌いかというと好きなのかもしれない。
ホップをいっぱい使ったビールは、みんながいっぱい作っているので、あえて作る必要はないかというのはある。
もっといろんなスタイルを知ってほしい。

 icon-external-link 国際女性デーに特別限定ビール醸造 —— ビール醸造を通してクラフトビール業界に携わる女性達を支援 ——(pdf)

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