明日、何を飲むか考える。(前編)

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2015/04/12(日) 茅ヶ崎の Beer Cafe HOPMAN にて開催された初のトークイベント「Botanical Beverage Works 田口さんと明日、何を飲むか考える会」の模様です。

田口さんからスライドを提供していただきましたので、併せてご紹介させていただきます。


目次

Botanical Beverage Works

ボタニカルビバレッジワークスの田口と申します。
こんばんは。

今日4時に一回目をやって、二回目ということで、一回目が終わってから、凄く小っ恥ずかしいので四杯くらい飲んで、多少酔っ払っているので、一回目とは違った話ができると思います。
でも、基本的には一緒だと思います(笑)

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まず、皆さん多分絶対に飲んでいただいているであろう「459」というビールについて説明しておこうと思います。

「459」というビールは、僕が会社を起こしてビールを造ろうとしているのが四国の香川県高松市というところです。

そこに「四国食べる通信」という、本人たちは食べるディアゴスティーニと呼んでいる、四国の気持のこもった食材と雑誌をセットでお届けする通販があります。ただ食べるだけでなく、ただ読むだけでなく、食べながらストーリーを伝えたいという思いで始めた雑誌というか食品の通販です。

そこの人たちがたまたま徳島の柚柑(ゆこう)という食材を1月号でとりあげていて、それが多少余っているから、それでビールを造ってみないかという話をいただいた。

僕は僕で、ヨロッコビールの吉瀬さんというブルワーと、友人としていつかビールを造りたいよねという話をしていて。

そういったタイミングが「B&B」という下北沢にある本とビールの店という面白いコンセプトでやっているお店があって、基本的には本屋さんなので作家さんが来てトークショーをするような場に何故か呼ばれた。

何故呼ばれたかというと、三人で呼ばれて、「四国食べる通信」の坂口さんの友人にヤッホーブルーイングの「水曜日のネコ」の缶の猫のデザインした女の子がいて、その人が「B&B」でしゃべった時に誰か紹介してくれということで、紹介された話に乗っかったという形ですね。

たまたま僕もヨロッコビールで何か造ろうという話をしていたので、このタイミングにあわせてビールを造りました。

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それが、徳島県の上勝町という山奥で作られている柚子と酢橘の合いの子みたいな柑橘なのですけども、有機栽培で作っていて、坂東さんから届けられたものを皮を剥いて煮沸のあとに風味付けに入れたりとか、タンクに香り付けでいれて造ったビールです。

よく言われるビールスタイルとかは特に関係がない感じで造ってます。

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コンセプト的には右下に何か映ってますけど、「496」という、ちょうど大手がクラフトに参入して、まるで罠にかかったように「496」という名前をつけたので、こちらは「459(四国)」でいこうということですね(笑)
こういうイタズラが好きな、こういう感じでやりました。楽しんでいただけたらと思います。


自己紹介

まず知りたいかどうかわからないですけど、自己紹介から始めたいと思います。
大阪生まれ広島育ちです。生まれた頃はこんなに可愛かったのですけど、今ではこんなにヒゲが生えて、でっかくなっちゃいました。

農大では一年生で入ると応援団が見て納得するまで大根踊りを踊らされるというオリエンテーションがあって、受験勉強で使わなかった上腕二頭筋をフルに活動させるので、翌朝必ず筋肉痛になるっていう逸話があります。農大と言えば「もやしもん」とかで有名な醸造学科と思われるのですけど、森林総合科学科という林業を専門に勉強する学科に入りました。
全然醸造とは門外漢でした。

学生時代は僕も例にもれず貧乏学生時代を過ごしていまして、ビールをもっと飲みたいけどビールって高いよなということで、飲むのをやめれば良いのに、どうして高いんだろうと突き詰めて考えてみたときがあった。ビールって酒税がとても高い。350mlでなんと80円も税金を払っているのに苛立ちを覚えた。ピンハネするのにはどうすればいいか?ということを考えた。その時に僕の醸造人生がスタートした。

その後、山の中で測量をする仕事とか、神田のアウトドア街でアウトドアウェアを売る仕事や、有名な会社でいろいろなものを売る仕事をした。

無印良品はキャンプ場を3つほど運営していて、もともとアウトドアウェアの会社で働いていたので、田舎暮らしにも憧れがあったし、できればフィールドで働きたいなという思いがあった。

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たどり着いたのは、群馬県の嬬恋村っていうキャベツで有名なところ。
まんなかに映ってるのが浅間山です。ここで一年ちょっと働いていたのですけど、ここにとある事実があって、キャンプ場と「とあるブルワリー」が近い。僕はビール好きで当時おみやげ物とかを何でも扱える立場にあったのですけども、そこにひょっこりヤッホーブルーイングの営業のかたがいらっしゃいまして、ちょうど人手が少ないから働いてみないか?という話になって、ビールの道に本格的に入りました。

当時、昔から日本のクラフトを知っている人には有名な石井さんという人にだまされまして(笑)
入った当初は出荷作業とか箱に住所のシールをいっぱい貼るような仕事をしていたのですけど、半年くらいしつこく造らせろという訴えをして、やっとビールを造ることができたわけです。

で、ひょっこりベアードに移動しました。

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とある散々な目にあった伝説的な秋葉原のクラフトビアフェスティバルというイベントがあって、ビールがぜんぜん足らなくて。
そこで僕もブライアンも短気なほうなので、こんなイベント居られるか!ということで、渋谷のフォーセッツでたまたまばったり、そんな二人が出会うことがありました。

ちょうどブライアンは今のベアードの修善寺工場を作るということで動いていて。僕は僕で…特に何もないですね(笑)

フォーセッツで「どうだ来ないか?」と。

ヤッホーブルーイングの大きなプラントを動かしていた身として、ベアードはベアードで沼津で1kLのそんなに大きくない設備でやっていたということで、お互いの需給がマッチしたということで、移籍することになりました。

沼津の小さな工場で一年間と修善寺で一年ちょっと。本当なら3年居てくれって言われたのですけど、だんだん修善寺工場も落ち着いてきて煮詰まってきたので「そろそろいいですか?」と言ったところ、「もうやめてもいいよ」と言われたので。

遂にこの「NEW NEXT NIPPON NOMIMONO」を造ろうと(笑)

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いよいよボタニカルビバレッジワークスという会社を起こしました。


なぜ、はじめるのか。

何で始めるんですかという話なのですけど、当然独立したいとか、自分で会社員に向かないんじゃないかとかいうネガティブな思いもあったのですけど、ビールのいちばん良いところって、手渡してみんなで飲んでもらうとハッピーになる。それが凄く行き渡りやすい飲み物だと思っている。

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その飲み物を使って、みんなの暮らしがより良くなればいいな。華を添えてられると良いなという思いがあって、自分でやろうと思った。

基本的に僕は世の中を斜めから見るような性格なのですが、常に変えたいなというものがいろいろあって、自分たちの一定のスタンスがあって、それによって世の中の価値観に、ちっちゃな変化を起こせたらいいなという思いがある。

そのひとつが消費に対するアンチテーゼ。
どういうことかと言うと、クラフトビールを飲んでらっしゃるかたは凄く良くわかると思うけど、コンビニに行って缶を手に取って、それで終わりじゃなくて、その間に誰が造ったビールで、どんなふうに造られたビールでというストーリーがあって、一個一個自分の生活の中で引っかかっていくという物に対するスタンスを持っていきたいというのがひとつ。

あとは、いろいろと忘れがちな畑と食卓のつなぎてでありたい。
今、直売所とか凄い盛り上がっていて、野菜を買うとか、そういうシーンがわかりやすいですけど、加工食品となると、その間に手が加わって、どうしても意識が遠のいてしまう。
実はビールだって、もともと農産物から出来ているんですよともっと訴えたい。総じて今の世の中の流れから言うと、カウンターカルチャーなんじゃないかと。

そんな手作り飲料会社を作りたいなということで、こういうことをやるようになりました。

会社をやるにあたって、ミッションステートメントというのを作ったのですけど。

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今日より少し良い明日を。

時としてビールを飲みすぎると、明日は二日酔いになって良い明日にならないかもしれないけど、ほどほどに飲むとみんなハッピーになるという。これを実現したいなというふうに思ってやっていきたいと思っています。


コンセプト

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自然というのを大事にしたいなと思っていて「素材が自然素材である」ということと、僕らがやっていく上で無茶、無理なことをしないという意味で「自然でいる」ということ。それによって作ったものが人の心理を根底から心地よくするということです。

ちょっときついことを言えば、ご飯とか例えば食べログ評価4.2とか、このビールはあいつが美味いって言っていたから美味いはずだとか、あの作り手が造れば間違いがないはずだとか、結構、頭で飲んじゃっていて、実は気持ち良くないこともあるのかもななんて、僕はものを造って飲んでいただく立場として思っている。
「うまい」という概念は難しいのですけど、本当に心の底から「うまい」と言えるものを、僕の中にある程度ある「正解」というものを一生懸命追求して、みなさんに提供して、本当に心の底から心地よいものづくりをしたいということです。

もうひとつは「地域的な必然性へのこだわり」ということで、漢字で書くとちょっと難しい感じですけど、簡単な話で、沖縄の人が北海道のブルーベリーのビールをつくる必然性はどこにあるんだと。わざわざ運んで無理して。まあ面白いし、造りたいかもしれないけど、それは実際に飲んだときには根底から心地よくないんじゃないかなというのが僕の考えです。
であれば、その辺にあるものとか。
今日は玉村本店のかたもいらっしゃってますけど、自分たちが作ったものを製品にして飲んでもらうという必然性が本当に人を気持ち良くさせるんじゃないかなと思います。それを伝えていきたい。

あとは「人との関わり」ですね。最近のトピックスだと「獺祭」という日本酒があって、あーだこーだ言う機会があったのですけど、いままで杜氏さんがやっていたのを分析して機械化して美味しいものが安定的に出来るようになりましたよというのは、それはそれで良いことなのかもしれないですけど。
その杜氏っていう、昔でいう冬に酒を造って、夏に帰っていって米を作ってというひとつの文化であったりとか、南部流とか地域地域でいろいろな杜氏の流派があるとか、人がベースで造っている部分とか。

単純にビールで言えばブルワリー同士がつながって面白い活動をしているとか、そういう人との関わりというのを大切にしていけば良いよなと思います。


大事にしたいキーワード

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You are what you eat
あなたが食べてるものはあなたそのもの。

これはイギリスのほうのおばあちゃんなんかが言っている諺らしいのですけど、例えばハンバーガーを食べるときに科学的な話をするとタンパク質があって、炭水化物があって、脂肪があって、血や肉となりエネルギーになるかもしれないのですけど、そういうものを作っていく上で「素材は何を選ぶんですか?」という部分を大事にしていきたいと思っています。

ビールも実際、手渡しして飲んでいただく。

さっき言ったとおり、コンビニで買ってきて、誰が作ったかわからない。別に全然いいことなんですけど、そういうもので乾きを満たしたりとか、ちょっと酔っぱらったりしたいのか。

それとも、あそこでやってるあいつが造ったもので、そういう状態になりたいのか。

食事とか酔っ払うとか、そういう行為は凄くかけがえのないものだと思っている。何故かというと食事は1日3回しかなくて、酔っぱらったら、もう飲めないという状態があるわけで、じゃあ、一生のうちにどれだけ繰り返されるのか考えた時に、満足するという状態に至る過程には、本当に現界がある。リミットのある話で、それをいかに充実させるのかが大事なことだと思う。

そういう意味で「You are what you eat」っていう部分も大事なキーワードとしてやっていきたいと思ってます。


中編に続きます。

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