日本におけるホップ栽培

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日本でのホップ栽培の歴史は明治初期の北海道開拓とともに始まりました。

現在では大手ブルワリーは東北や北海道の農業協同組合と契約栽培を行っています。また、小規模ブルワリーではホップを自家栽培するところが出てきています。

日本におけるホップ栽培(2017) にアップデート記事を追加しています。

目次

ホップの栽培形態

契約栽培

大手ビールメーカーは農家(農業協同組合)と数量や品質、価格などの条件を決めて直接取引を行う契約栽培を行っています。全国ホップ農業協同組合連合会の資料などによると、現在では東北および北海道にてホップの商業栽培が行われています。

アサヒビール

  • 岩手アサヒホップ生産組合(岩手県 盛岡市玉山区)
  • 山形ホップ組合(山形県) – 2015年2月に山形ホップ農業共同組合から改組

キリンビール

  • 遠野ホップ農協(岩手県 遠野市)
  • 江刺忽布農協(岩手県 奥州市、北上市)
  • 秋田北部ホップ農協(秋田県 大館市)
  • 大雄ホップ農協(秋田県 横手市大雄)
  • 山形県南ホップ農協(山形県 西置賜郡白鷹町)

サッポロビール

  • 上富良野町ホップ組合(北海道 上富良野町)
  • 岩手県北ホップ農協(青森県 三戸町、田子町/岩手県 岩手町、軽米町)

サントリービール

  • サントリーホップ生産組合(岩手県 紫波町、花巻市)

自家栽培

長野県の玉村本店(志賀高原ビール)信州東御市振興公社(オラホビール)、新潟県のシンポ企画(ストレンジブルーイング)、静岡県のベアードビール、鳥取県の久米桜(大山Gビール)、島根県の島根ビール(ビアへるん)では自社のホップ畑でホップ栽培を行っており、育てたホップを使ったビールを製品として出荷しています。ほかにも、秋田県の田沢湖ビール、山梨県の嬬恋高原ブルワリー、埼玉県の麦雑穀工房マイクロブルワリー、茨城県の木内酒造(常陸野ネストビール)などでもホップの栽培を行ないビールに使用しています。

ほかに、山梨県北杜市で種の保存のためにホップ栽培を続けている浅川さんからホップを購入している神奈川県のサンクトガーレンや、地元のNPO法人とともにホップ栽培を行なっている南信州ビールなどがあります。


新たな動き

京都府与謝野町では若い町長が中心となって「与謝野ブランド戦略事業」としてクラフトビール醸造を見すえたホップ栽培を2015年に開始しました。町から890万円の補助金を受け、35aの農地で輸入品種28種と国内品種1種類を育て、そのうちアメリカ系の5品種が良好に育ち約100kgの収穫があったそうです。

また、農家と契約し国産ホップを栽培し国内流通させることを目的としたホップジャパンが2015年6月に設立され、秋には国内で収穫されたばかりの信州早生、カスケード、センテニアルといったホップの販売を開始しました。

ほかにも、株式会社ふたこ麦麦公社による東京都世田谷区でのホップ栽培プロジェクトなど新たな動きが見られます。

日本におけるホップ栽培

日本におけるホップ栽培


日本のホップ品種

信州早生

1910年(明治43年)、大日本麦酒の山鼻ホップ園で栽培されていたアメリカ種のホワイトバイン(White Vine)の雄株と、ドイツ種のザーツ(Saazer)の雌株を交配しました。それを育て、優良な株を選抜し育成します。1913年(大正2年)には「ドイツ種」と呼び、長野県農事試験場において試作した結果、長野の気候に適した品種であることがわかりました。1917年(大正6年)に「信州忽布」とし、長野県穂積村で試作を行います。翌年には長野県上高井郡、下高井郡、上水内郡で契約栽培が始まりました。1919年(大正8年)には「信州早生」と改名し、長野県の各地で契約栽培を始めました。
国産のホップ種としては現在一番多く栽培されている品種になります。

α酸:5.8%
β酸:4.7%
コフムロン:51%
精油量:0.71mL/100g
ミルセン:57.56%
フムレン:12%
カリオフィレン:20.3%
ファルネセン:0.1%
USDA 60042:cultivars / chem


キリン2号

信州早生をもとに麒麟麦酒が1953年〜1954年頃に品種改良して生まれたのが「キリン2号」です。
2015年(平成27年)8月27日に「IBUKI」として商標出願(商願2015-82513)されています。

α酸:8%
β酸:6.4%
コフムロン:43-45%
精油量:1.18mL/100g
ミルセン:50%
フムレン:14%
カリオフィレン:9.4%
ファルネセン:0.2%
USDA 21286:cultivars / chem


ゴールデンスター

信州早生からサッポロビールが芽条変種として見出したのが「ゴールデンスター」です。
1970年頃には存在していたようです。

α酸:5.4%
β酸:4.6%
コフムロン:50%
精油量:0.63mL/100g
ミルセン:57.1%
フムレン:12.5%
カリオフィレン:5.2%
ファルネセン:-
USDA 21039:cultivars / chem


かいこがね

1957年(昭和32年)、山梨県長坂町の井出彦正氏の圃場で栽培されていた「キリン2号」から黄色葉の突然変異体を発見しました。「信州早生」よりも草丈が低く、1つるあたりの毬花数は3〜5割多いが、大きさは小さい品種です。
麒麟麦酒は1979年(昭和54年)7月23日に「かいこがね」として品種登録出願を行いました。国産ホップの中では最初に品種登録されたものになります。

品種登録番号:20
出願番号:34
出願年月日:1979/07/23
登録年月日:1980/03/31
育成権の消滅日:1995/04/01
品種登録者:麒麟麦酒株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


とよみどり

1967年(昭和42年)に麒麟麦酒が「Northern Brewer(USDA 64107)」の雌株に「Wye Male OB79(USDA 64103M; アメリカンの野生種をイギリスのWye Collegeが OB79 として自然受粉させたもの)」の雄株を交配して育成した品種。

品種登録番号:160
出願番号:170
出願年月日:1980/07/21
登録年月日:1981/10/08
育成権の消滅日:1996/10/09
品種登録者:麒麟麦酒株式会社
α酸:11-13%
β酸:5-6%
コフムロン:40%
精油量:1.06mL/100g
ミルセン:59%
フムレン:9-12%
カリオフィレン:4-5%
ファルネセン:-
USDA 21676:cultivars / chem


ソラチエース

1975年(昭和50年)サッポロビール株式会社幌工場上富良野分場にて「70K-SH-6(USDA 21233); Brewer’s Gold の雌株とSaazerの雄株の自然受粉させたサッポロビールの育成種」の雌株と「Beikei No.2」の雄株を交配したものから選抜した品種。
育成終了後、アメリカに送られた種がドライホップとして用いることでレモングラスのような風味が出ることが好まれ、商業栽培されることになった。

品種登録番号:613
出願番号:771
出願年月日:1983/03/15
登録年月日:1984/09/05
育成権の消滅日:1999/09/06
品種登録者:サッポロビール株式会社
α酸:12−13%
β酸:8.8-9.9%
コフムロン:23-27%
精油量:2.8-3.2mL/100g
ミルセン:68-72%
フムレン:3.5-6.4%
カリオフィレン:15-18%
ファルネセン:1.5-2.0%
USDA 21702:cultivars


フラノエース

1974年(昭和49年)サッポロビール株式会社幌工場上富良野分場にて「69K-BH-66; Brewer’s Gold の雌株とBeikei No.2の雄株を交配させたサッポロビールの育成種」の雌株と「Saazer」の雄株を自然受粉させたものから選抜した品種。

品種登録番号:614
出願番号:772
出願年月日:1983/03/15
登録年月日:1984/09/05
育成権の消滅日:1999/09/06
品種登録者:サッポロビール株式会社
α酸:7-8%
β酸:5-8%
コフムロン:21%
精油量:1.53mL/100g
ミルセン:50%
フムレン:19%
カリオフィレン:7%
ファルネセン:12%
USDA 21701:cultivars / chem


ふくゆたか

1971年(昭和46年)麒麟麦酒株式会社の試験圃場(山梨県韮崎市)にて「C46-15-05; 麒麟麦酒の育成種」を自然受粉させたものから選抜した品種。

品種登録番号:900
出願番号:1074
出願年月日:1984/02/22
登録年月日:1985/07/18
育成権の消滅日:2000/07/19
品種登録者:麒麟麦酒株式会社
α酸:16%
β酸:6-7%
コフムロン:23%
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


きたみどり

1980年(昭和55年)麒麟麦酒株式会社の植物開発研究所(福島県喜多方市)にて信州早生に由来する「C-79-27-01」の雌株に「C-76-64-110」を交配したものから選抜した品種。

品種登録番号:1978
出願番号:2547
出願年月日:1987/12/17
登録年月日:1989/09/14
育成権の消滅日:2001/09/15
品種登録者:麒麟麦酒株式会社
α酸:9-12%
β酸:5-6%
コフムロン:22%
精油量:1.35mL/100g
ミルセン:34%
フムレン:31%
カリオフィレン:8-10%
ファルネセン:6-7%
USDA 21677:cultivars / chem


南部早生

1980年(昭和55年)アサヒビールの岩手試験農場(岩手県岩手郡玉山村)にて「Bullion」の雌株にアメリカ野生種の「Humulus lupulus var. neomexicanus」を交配したものから選抜した品種。

品種登録番号:2400
出願番号:3190
出願年月日:1989/02/03
登録年月日:1990/10/06
育成権の消滅日:2002/10/08
品種登録者:アサヒビール株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


イースタンゴールド

1981年(昭和56年)麒麟麦酒株式会社の植物開発研究所(福島県喜多方市)にて「C-76-64-17」の雌株に「Wye Male OB79」を交配したものから選抜した品種。

品種登録番号:2882
出願番号:3645
出願年月日:1989/12/14
登録年月日:1991/11/19
育成権の消滅日:2001/11/20
品種登録者:麒麟麦酒株式会社
α酸:17.3%
β酸:9.8%
コフムロン:22%
精油量:2.06mL/100g
ミルセン:35%
フムレン:25%
カリオフィレン:10%
ファルネセン:6%


イースタン・グリーン

1982年(昭和57年)麒麟麦酒株式会社の福島ホップ管理センター(福島県喜多方市)にて「とよみどり」の自然交雑種を採種し、1985年(昭和60年)に植物開発研究所(栃木県塩谷郡喜連川町)で選抜した品種。

品種登録番号:4420
出願番号:5682
出願年月日:1992/12/25
登録年月日:1995/03/23
育成権の消滅日:2010/03/24
品種登録者:麒麟麦酒株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


フラノ18号

1983年(昭和58年)サッポロビール株式会社幌工場上富良野分場にて「ソラチエース」の雌株と「Saazer」の雄株を交配したものから選抜した品種。

品種登録番号:4776
出願番号:6049
出願年月日:1993/04/26
登録年月日:1995/11/08
育成権の消滅日:2010/11/09
品種登録者:サッポロホールディングス株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


フラノ6号

1984年(昭和59年)サッポロビール株式会社幌工場上富良野分場にて育成系統に「Beikei」を交配したものから選抜した品種。

品種登録番号:4777
出願番号:6050
出願年月日:1993/04/26
登録年月日:1995/11/08
育成権の消滅日:2010/11/09
品種登録者:サッポロホールディングス株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-
US PP9511 P


フラノベータ

1988年(昭和63年)サッポロビール株式会社幌工場上富良野分場にて「フラノ6号」に「Beikei」を交配したものから選抜した品種。

品種登録番号:9307
出願番号:10415
出願年月日:1997/12/24
登録年月日:2001/10/12
育成権の消滅日:
品種登録者:サッポロビール株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


フラノローラ

1989年(平成元年)サッポロビール株式会社幌工場上富良野分場にて「Saaz-YG」に「Saaz」を交配したものから選抜した品種。

品種登録番号:10476
出願番号:11476
出願年月日:1998/12/25
登録年月日:2002/09/04
育成権の消滅日:2008/09/05
品種登録者:サッポロホールディングス株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


リトルスター

1988年(昭和63年)サッポロビール株式会社幌工場上富良野分場にて「Tettnang-YG」に「Saaz」の自然交雑種子から選抜した品種。

品種登録番号:13532
出願番号:15376
出願年月日:2002/12/27
登録年月日:2005/12/07
育成権の消滅日:-
品種登録者:サッポロビール株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


フラノスペシャル

1995年(平成8年)サッポロビール株式会社幌工場上富良野分場にて「ソラチエース」の雌株に「USDA 19058 M(Early GreenとUnknown-Sの自然交雑種の雄株)」を交配したものから選抜した品種。

品種登録番号:15395
出願番号:17740
出願年月日:2004/12/10
登録年月日:2007/03/23
育成権の消滅日:-
品種登録者:サッポロビール株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


フラノ ロイヤル グリーン

「Tettnang」の雌株に「Saaz」の雄株を交配したものから選抜した品種。

品種登録番号:19251
出願番号:23317
出願年月日:2008/12/24
登録年月日:2010/03/11
育成権の消滅日:-
品種登録者:サッポロビール株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


フラノ ビューティ

「Chinook」の雌株に「Saaz」の雄株を交配したものから選抜した品種。

品種登録番号:19536
出願番号:23318
出願年月日:2008/12/24
登録年月日:2010/05/10
育成権の消滅日:-
品種登録者:サッポロビール株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-


ふらのほのか

「ザーツ」の雌株と交配させたホップ。

品種登録番号:-
出願番号:28770
出願年月日:2013/12/20
登録年月日:-
育成権の消滅日:-
品種登録者:サッポロビール株式会社
α酸:-
β酸:-
コフムロン:-
精油量:-
ミルセン:-
フムレン:-
カリオフィレン:-
ファルネセン:-
商標登録番号:5675571
商標登録日:2014/06/06


登録申請中のホップ

品種登録出願中のホップは、サッポロビール株式会社のフラノ0802D号(出願番号:29811)、フラノ0901B号(出願番号:29812)、フラノ0902D号(出願番号:29813)があります。

商標登録されているホップは、サッポロビール株式会社のきたほのか(商標登録:5668989)、フラノブラン(商標登録:577627)、ノールブラン(商標登録:5776268)、フラノローラ(商標登録:5776269)、フラノローザ(商標登録:5776270)、ホクトエース(商標登録:5800011)があります。

商標出願中のホップは、サッポロビール株式会社のフラノマジカル(商願2015-125471)があります。


ホップ栽培の歴史

※詳細情報募集中です。

創成期(1870年代以降)

1871年(明治4年)、アメリカの鉱山技師で、北海道開拓使の地質工作舎密鉱山長(ちしつこうさくせいみこうざんちょう)に着任したトーマス・アンチセル(Thomas Antisell)が地質調査を行った際に、北海道岩内町に流れている堀株川(ほりかっぷがわ)流域で野生のホップが自生していることを発見しました。1872年(明治5年)7月21日、黒田清隆開拓次官宛にホップの栽培を行うように提案したことが記録に残されています。

1876年(明治9年)9月23日に開拓使麦酒醸造所が開業し、その翌年からホップの栽培が始まりました。今の札幌市北二条から北五条西三丁目のあたりに、1877年(明治10年)4月に第一園および第二園(1.8ヘクタール)の開拓使ホップ園が開園しました。アメリカ種やドイツ種のホップを栽培していましたが、ドイツ種のホップはうまく育てることができなかったため、アメリカ種中心の栽培になりました。
1878年(明治11年)には第三園(0.8ヘクタール)、1880年(明治13年)には第四園(1.0ヘクタール)、1881年(明治14年)には札幌市北七条西七丁目から北六条西四丁目あたりに第五園(1.0ヘクタール)が開園されホップの自給が可能になりました。

1882年(明治15年)、開拓使が廃止され札幌県・函館県・根室県が設置されると、開拓使麦酒醸造所は札幌麦酒醸造所に改称され農商務省工務局の所管となりました。開拓使ホップ園も札幌ホップ園と改称されました。

1883年(明治16年)、札幌麦酒醸造所が農商務省北海道事業管理局札幌工業事務所の所管になると、ホップ園は農商務省北海道事業管理局札幌農業事務所の所管になります。

1884年(明治17年)5月、札幌麦酒醸造所は札幌麦酒醸造場と改称されます。

1886年(明治19年)1月26日に北海道庁が開設され、北海道庁の所管となりますが、11月30日に大倉組商会へ払い下げられると、札幌麦酒醸造場は大蔵札幌麦酒醸造場になりました。あわせて、ホップ園は菊亭脩季(きくていゆきすえ)候爵に払い下げられ、現在の札幌市白石区に5haの規模で移植されました。

1887年(明治20年)12月28日に札幌麦酒会社が設立されると、醸造技師としてドイツ人のマックス・ポールマンが招聘されます。すると札幌で育ってきたホップを使用しない方針に転換してしまい、需要がなくなったホップ栽培は途絶えてしまいます。

1894年(明治27年)9月26日にマックス・ポールマンが退職します。

1896年(明治29年)から二年間ヨーロッパに派遣された矢木久太郎がドイツで購入したホップ種子を持ち帰り栽培した結果、有望であることが確認できたため、1904年(明治37年)に苗穂ホップ園を現在の札幌市東区北八条東九丁目あたりに開設し、残存していた品種とともに栽培を再開しました。

1906年(明治39年)3月26日、札幌麦酒、日本麦酒、大阪麦酒が合併し大日本麦酒株式会社が設立されるとともに山鼻ホップ園を札幌市南区石山一条二丁目あたりに開設されました。


栽培地域の拡大(1910年代以降)

1910年(明治43年)、山鼻ホップ園で栽培されていたアメリカ種のホワイトバイン(White Vine)の雄株と、ドイツ種のザーツ(Saazer)の雌株を交配しました。それを育て、優良な株を選抜し育成します。1913年(大正2年)には「ドイツ種」と呼び、長野県農事試験場において試作した結果、長野の気候に適した品種であることがわかりました。

1914年(大正3年)、第一次世界大戦が始まると海外からホップの輸入が困難になってきます。

1917年(大正6年)、大日本麦酒は選抜した「ドイツ種」を「信州忽布」とし、長野県穂積村で試作を行います。

1918年(大正7年)、大日本麦酒は長野県上高井郡、下高井郡、上水内郡や北海道札幌市の周辺でホップの契約栽培を始めます。
また、日露戦争の勝利により設立された満州鉄道の公主嶺農業試験場では北海道帝国大学農科大学からホップ苗を取り寄せ試作を始めます。ザーツ(Saazer)、ハラタウ(Hallertauer)、札幌四号、札幌五号、札幌六号、札幌十号といった品種が満州の土壌にあっていたと記録されています。

1919年(大正8年)、大日本麦酒の「信州忽布」は「信州早生」と改名され、長野県をはじめ、山梨県など周辺の農家でも信州早生が栽培されはじめます。

1920年(大正9年)、麒麟麦酒は山梨でホップの試験栽培を始めます。

1923年(大正12年)、大日本麦酒は上富良野村、夕張町、遠別村などでホップの試作を行い、1926年(大正15年)10月に上富良野ホップ園が開設されました。

1934年(昭和9年)6月、満州に大満州忽布麦酒株式会社が設立されるとホップの親株5千本、三年根3万本および20万本の苗を買収し、ホップ栽培を始めたそうです。

1937年(昭和12年)、麒麟麦酒は山梨県の農家とホップの契約栽培を始めます。
7月には支那事変から1941年の日中戦争そして太平洋戦争へと発展していきます。

1939年(昭和14年)、麒麟麦酒は山梨県の韮崎駅付近に韮崎忽布処理場を開設します。
また、山形県でも麒麟麦酒はホップの試作を行いました。

1940年(昭和15年)、大日本麦酒は山形県で試作を行います。麒麟麦酒は福島県でホップの契約栽培を始めます。
これらの動きは、太平洋戦争の勃発による国産ホップの自給策がとられたためです。

1941年(昭和16年)、麒麟麦酒は山形県でホップの契約栽培を始めます。

1942年(昭和17年)、麒麟麦酒は山形県に上山忽布処理場、福島県に喜多方忽布処理場を開設しました。

1943年(昭和18年)には、過去最大の生産量となりホップの自給体制が確立されます。


戦後(1945年以降)

1949年(昭和24年)9月1日、大日本麦酒は日本麦酒株式会社と朝日麦酒株式会社に分割されます。
ホップの輸入も再開され、麒麟麦酒はアメリカのヤキマホップを輸入しました。

1950年(昭和25年)、麒麟麦酒の山鼻ホップ園は札幌市豊平区平岸一条五丁目から六丁目あたりにホップ園を移転し、関連会社の北星興業株式会社が経営を行いました。

1951年(昭和26年)、麒麟麦酒に韮崎試験地が返還されます。
また、福島県田村郡ではホップの作付けを開始します。

1952年(昭和27年)、麒麟麦酒は山形県に置賜忽布処理場を開設します。

1955年(昭和30年)、ホップ生産量は772トン。

1956年(昭和31年)、宝酒造が岩手県江刺町でホップの契約栽培(6.4ヘクタール)を始めます。

ホップの栽培地は長野県、山梨県、福島県、山形県だけでなく、1956年(昭和31年)秋田県、1962年(昭和37年)岩手県や新潟県にもひろがっていきます。

1960年(昭和35年)6月、全国忽布農業協同組合連合会が設立されます。

1962年(昭和37年)、日本麦酒は岩手県の県北部でホップの契約栽培を始めます。
朝日麦酒は岩手県玉山村でホップの試作を始め、翌年契約栽培を始めます。
寿屋は岩手県紫波町でホップの契約栽培を始めます。

1964年(昭和39年)、キリンビールは岩手県遠野市でホップの試作を始めます。

1965年(昭和40年)、ホップ生産量は2692トン。
キリンビールは宝酒造から岩手県の江刺忽布処理場を買収します。

1966年(昭和41年)8月22日、キリンビールは福島県岩瀬郡鏡石町に喜多方忽布処理場鏡石分場を開設し、1967年(昭和42年)10月1日には鏡石忽布処理場に昇格させます。

1968年(昭和43年)、ホップ生産量は3295トンのピークを迎えます輸入ホップは512トンでした。
農産物の自由化がクローズアップされ、長野県、山梨県、新潟県などに多かった小規模栽培者の廃耕が促されることになりました。

1973年(昭和48年)、札幌でのホップ栽培は直営および契約栽培ともに廃止されます。

1974年(昭和49年)、ホップ生産量は2074トン。輸入ホップは3711トンになります。

1978年(昭和53年)、ホップの増反(ぞうたん)は中止され、自然廃耕者の肩代わりも認めない現状維持の方針が打ち出された。

1985年(昭和60年)、ホップ生産量は1882トン。輸入ホップは4325トン。
長野県で大きく生産量が減り、宮城県ではホップの栽培が終了しました。

1990年(平成2年)、ホップ生産量は1656トン。

1995年(平成7年)、ホップ生産量は1103トン。

1998年(平成10年)、長野県でホップの栽培が終了しました。

2000年(平成12年)、ホップ生産量は692トン。
福島県でホップの栽培が終了しました。

2005年(平成17年)、ホップ生産量は508トン。

2010年(平成23年)、ホップ生産量は335トン。


参考資料

大日本麦酒(株)『サッポロビール沿革誌』
サッポロビール(株)『サッポロビール120年史 : Since 1876』
麒麟麦酒(株)『麒麟麦酒株式会社五十年史』
麒麟麦酒(株)『麒麟麦酒の歴史. 戦後編』
大満州忽布麦酒(株)『ホップの話』
北島親『ビールとホップ 苦悩と栄光の歴史』
上富良野町郷土をさぐる会『郷土をさぐる』
全国ホップ農業協同組合連合会『ホップに関する資料』
農林水産省 品種登録データ
USDA Hop Research
岩手県 ホップに関する資料
Shoo Horiuchi and Atsushi Murakami(1992) New Japanese Hop Varieties with High a-Acid Content
志賀高原ビール ゆるブル

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