明日、何を飲むか考える。(後編)

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2015/04/12(日)「明日、何を飲むか考える。」のラストはQAトーク。

プレゼンの中では聞けなかった話についても語られています。

Botanical Beverage Worksの田口さん、Beer Cafe HOPMANの田代さん、ありがとうございました。


Q.販売エリアの縮小とか、地域で原料を得ようとすると、値段が高くなるのでは?

今の現状で言えばそうだと思います。モルトを作っている人はぜんぜん居ないし、そういうことをやっている人も居ないし、やってみたらやってみたで高くなるという現状があるからそうなんですけど、僕は果てしない挑戦だと思うのですけど、やりはじめないと始まらないという考えです。

誰かがやるようになれば、ドイツでいっぱい作っているよりは安くはならないかもしれないけど、それなりに安くて良いものができるはずだと。
そこは理屈じゃくて信じてやるしかないと。半分ロマンなのかもしれないですけど、そういう気持ちでやりたい。

その時に価値観として、そのビールが果たして高いと感じるのか安いと感じるのかという話もある。今、コンビニで大手の缶ビールが一缶208円ですと売っていると、皆さんの頭の中の値段マップはコンビニの缶ビール208円からスタートしてしまうんですよね。そこから比較して高いか安いかというふうになってしまう。

全く違う価値観で新しい飲み物をつくると、それは新しい基準として現れるんじゃないか。

例えば、iPhoneが五万四千円ですというけど、みんな持ってるんじゃないですか。携帯電話として五万四千円ってありえなかったじゃないですか。

そういうのと一緒で、価値観のイノベーションというのもクラフトビールの中で必要かなと僕はすごく思っています。
良い悪いというわけではなく、そう思ってます。


Q.クラフトビールって誰々さんの作品なんだよね?作品じゃないですか。

そうですね。クラフトビールは半分アートで半分サイエンスだと言う人がいますけど、僕は造り手至上主義なのはちょっとだけ嫌なところがあって、やはり組織・チームで造りあげるものなので、人にフォーカスしすぎるよりも、人とその周辺の哲学というものですね。

その会社がもっているコンセプトとか哲学が果たして何かというのが明確にあるべきで、皆さんにはそれで選んでいただきたいですね。


Q.田口さんのYou are what you eatということにすごく共感しました。難しいと思うのですけど、田口さんの思う美味しいビールとか、こういう味わいのビールを造りたいとかを聞きたい。

先日、山梨のワイナリーを訪ねた時に、そこは新進気鋭でやっていて、とんがったワインを作っている所なのですけど、息子さんがワインを作っていて、引退したとうちゃんかあちゃんが店番をしている。
かあちゃんが出てきて言うには「おすすめのワインをくださいと言われるのですけど困るのよね。だって人それぞれじゃない」ということを言われて。
「だから私たちは試飲してもらっているんです」というような話をされた。

当然ながら味というのは感じ方が違う。そういう部分があるからという前提で、僕が美味いと思うというか、今の傾向に対して僕はこう思うという話をすると、僕は基本的にフレーバー豊かな個性のある物づくりをしたいとは思っている。

でも、フレーバーの強さとか個性。なんというか制限。どこまでやっていいかという部分で思ったのは、自然で生えている花の中で香りがいいものとか。そのなかで香りが強いものとか弱いものが当然あると思うのですけど、自然にあるものを。
ホップならホップで、苦いのが好きだ!ホップの香りが好きだ!と自然に付けていって、自然に存在しうる最大限のフレーバーを超えてしまったものは人の深層心理にとって、ひょっとしたら不快なものなんじゃないかなと思う。

だから個性があるけど、そういう範囲の内側に入ったものに留めつつ。すごい抽象的で申し訳ないのですけど。

だから、ホッピーでトンガってるぜという物づくりではないですね。

皆さんが思ってるより、蓋を開けたら少し大人しいなと思うかもしれないですけど、その部分は製法とか、今までやっていないものとかに挑戦したい。
アイディアは頭の中にいっぱいあって、それをやればまたちょっと違ったものが出来るんじゃないかな。
あえてお茶を濁して答えとしたいと思います(笑)


Q.田口さんが思われる社会になったら日本は豊かになると思います。僕は香川県出身なので、田口さんの想いを皆に伝えていきたい。香川県という地はクラフトビールにとって不利なんじゃないかと思うのですけど、香川でやられることの勝算というのはあるのでしょうか?

香川というか四国はビール不毛の地と呼ばれておりまして、かつては9個くらいブルワリーがあったけど、今は3つぐらいになっちゃうようなところなんですね。

香川でアイリッシュパブをはじめたかたがいらっしゃって、最初ギネスを900円で出したんですって。CRAICっていうお店なんですけど。
最初のうちきたお客さんがいった言葉は「ギネスに900円かよ。うどんが5杯食えるじゃねえか。」つまり、そこが貨幣通貨単位みたいな。うどん1杯が180円というのが一つ貨幣基準になっている。それはそれで、物を計る価格の一つの軸であって、そこはちょっと信じるより他は無いと思うのですけど。

いままで香川ないし四国でやってきたブルワリーが、果たしてどれだけ地元の人に心地よくやっていたのかというのを考えてみると、どうなのかな?と。
表向きは一生懸命ビールを造っているふうにしているけど、お客さんが感じるほど熱のあるビール造りができるかというと、多分やってみてもないと思うのですよね。

そういう意味で、僕は香川に対して、瀬戸内で取れる柑橘・フルーツの豊富さとか、和三盆に代表される糖類とか、実際にはうどんにはちょっと向いていなかったさぬきの夢2000とかのうどん小麦とか。
そういった素材をビールという形で、それらをつくる人がやっぱり苦労していて、一生懸命造っていて、それがビールになって出てきた時に、それを作ってきた人たちは嬉しいと思うし買うはずというか、誇りをもって勧められる。それはもちろん、美味しいというのが前提だと思うのですけど。

そういう状態になったときに、今までイメージではダメと思ってきたかもしれないけど、今まで香川で起きた事がないことを起こしていきたいと思っています。

実際、商売になったときにホップマンさんにちょっと助けてくれないかとか、樽を買ってくださいとか言うかもしれないですけど。

【田代】バリバリ買いますよ!

基本的に地域でやるというのと、田代さんみたいな人との繋がりで売っていくという方法でバランスを取っていこうと思っている。

やっぱり信じて続けていくことで、いつかはそういう日が香川にも。

実際に最初はギネスをうどん五杯分かと言われた人も、今は認められて、いろんな香川のビール好きが集まる良い店になっているという実態がある。そういう意味で、やっていけばいけるというのがある。

逆に、僕は丸亀製麺立林公園前店が閉店したという話を聞いて、大手のうどん屋が撤退しちゃうような、小さなうどん屋を認める価値観がある。
そういう、うどんじゃないけど、地域でちっちゃく物を作る人は最高だという方向に向かった瞬間に、逆に香川は熱いんじゃないかと。

先日、村上春樹さんが書いている村上さんのところみたいな質問コーナーがあるのですけど、広島からお好み焼きを取り上げても、名古屋からきしめんを取り上げても暴動は起こらないけど、香川からうどんを取り上げたら暴動が起こるはず。もし日本から革命が起こるなら香川からだということを村上春樹さんが言っていて、僕はそれにすごく勇気付けられました。

本当にやれると思ってやる以上、きっとうまくいくと思うし、その時いい故郷になっていると思います。頑張ります!


Q.田口さんが夢について語っていたが、自分の仕事に対して誇りがあると思う。
自分は転職しようと思っているが、どうすれば仕事を楽しめるか?

基本的には聞く相手を間違えていると思う(笑)

僕は基本的な性格で、下北沢のときに話したけど「あきっぽい負けず嫌い」という性格で、人に負けるのはすごい嫌なんですけど、負けず嫌いをどう発揮したかというと、アウトドア業界に居たときに、アウトドアの世界はムキムキでストイックな人が多かったので、こりゃ勝てないなと。そこで、あいつらに負けるなと頑張るんじゃなくて、次に移って、いろいろ転がり続けているうちに、ビールという、何が良かったのかわからないけどフィットする仕事がみつかって良かった。

周りの人はいろいろ言うかもしれないし、履歴書にいろいろなことを書くのは良くないと言われるし、本当にダメだったときに僕は責任を取れないですけど、いろいろ試すというのが良いというのが一番良い回答かなと思う。

やっているうちに、本当に嘘偽りなく僕は、ビールのことをずっと考えていて。ということは、ビールのことが好きなんだと思うのですけど。

世の中で一流な人とかと僕を一緒にするのはおかしな話ですけど、特に意識せずに好きでやっているうちに、プロフェッショナルの森に迷い込んじゃったみたいな。

なんか、あとから理論みたいな感じだと思うのですよね。
どうしたらこうなったじゃなくて。一番良いのは自分はこれが寝ても覚めても、この事が好きだというものを探すとか。何かわからないというのであれば、あちこち行っていろんな人と話すとか。話しているうちに絶対見つかるはず。無理して嫌なことはやる必要はないんじゃないかな。
親には怒られましたけど、そう思います。

良い子は真似をしないほうが良いと思います。


Q.今後やはり大手さんがクラフトの名前を出してきたりすると思うのですけど、大手のこういう技術があったらいいのかなというのはありますか?

技術に関しては大手さんはすごく良いというか、すごいと僕も思います。
研究開発費とかいっぱい投入して、すごい専門家がいっぱい研究していて。
そういう知識とかは僕も大手さんはすごいと僕も思います。
クラフトだ大手だという部分で乖離しているのは「なぜビールを造るか」という根源のところや、「なぜビールを造るのか」という考え方が違っているだけで。

僕は、大手さんにそんなことを言うわけではなくて、同じビールを造る仲間として普通に話したいし、逆に仲良くしようと思っています。


Q.農大で林業のほうに入ったときに醸造学科の人たちと話とかしましたか?

えっと、していません。友達はいたのですけど、日本酒の人ばかりで、正直ビールに対する情熱は僕のほうが上でした。どうだ(笑)

基本的に醤油、味噌、酒のせがれがコネで入るのが醸造学科で、わりとチャラチャラした人が多かったですね。挨拶もろくにできないような。


【山脇】今日、ちょうどお昼に都内でいろんな話を聞くイベントに行っていて、田口さんの話を聞きたいのですけど、いろんな話が頭の中でぐちゃぐちゃしていて、田口さんに聞きたい。日本の法律だとお醤油や味噌は学校があるけど、ビールを学ぶ専門の学校は作れないという法律があるらしいのですけど。日本酒ももともとは日本酒の人たちがお金を出しあってやっている。ビールもこれだけ需要が増えて、横のつながりがあるので、田口さんの話にも感動したのですけど。
某横浜の人はピルスナーだけをやっていきたいとか熱く語る人が多くて。でも、それを邪魔するのは税金というものがすごく大きいんだなと。うちもビアパブなので、オーナーが法律を変えなきゃといつも言っている。どうしても底辺にあって、みんなでどうやっていったら。せっかくこれだけ絆が強いのに、日本酒の人みたいにどこかとタックを組んでもいいけど、そこが回らないとビール業界って儲からないじゃないですか。すごく悪循環というイメージがあって。
何を質問したらいいんだろう。
だから、日本でこれだけクラフトビールの需要が増えてきて、私たちにできることってなんだろう?わからないのですが、本当に少しずつのことだと思うのですけど、街と一緒につくるとか会社と一緒に社会を変えるのも大切だけど、私もビールを注いでいる人間だし、飲み手でもあるので、そういう人たちが今の悪循環をプラスにもっていくにはどうすればいいか?がずっと疑問なので、田口さんのお話を聞いてみたい。

お昼にポパイでやっていたトークショーの内容は、幸いにもこちらのかたがアップしていたので僕も知っているのですけど。
それを見て思ったのが、基本的に変えられないとか、今はこうだからこうするしかないとか。全体的なトーンとして暗いなと。明るい未来をまずイメージするということが大事なんじゃないかと思っている。
どうすればいいかというのは、僕もわからないのですけど、できるんじゃないかなと(笑)
具体的にいうと、政治的な抜け道とかを見つけちゃうとか。わかんないですよ?
もうひとつは、切実に思っているのはブルワリーは儲けにくい状況なのですけど、さっき質問していただいた時に答えたとおり、頭の値段マッピングは缶が一本200円くらいからスタートしていて、そこから抜けられる存在がないというのがひとつあると思う。

例えば、輸入ビールで言うとBrueryとか、志賀高原さんの山伏とか、ああいう取組みは良いと思っていて、ビールって330mlの瓶に入っていて、地ビールだと450円から500円。500円は高いよねというイメージがあって、売る側もそのイメージに縛られて売ってしまっている。
落ち着いて考えれば、儲からない値付けっておかしいんじゃないですか?という逆説が成り立つと思っている。そこを一回整えてやる必要があると思っている。今の税制を前提とした上で僕はすごく思っている。

まずやってやると。

それで、やることをやって力を持った上で、皆さんに愛して飲んでくださっていのにどうするんですか?と。

僕らは業者としてそういう訴えをおこすと、利益を得る立場が訴えているので、あまり動かないんですよ。
どうするかというと、ビールを飲んでいる皆さん市民が動くというのが、一番動かせると思う。

そこに伝えてアクションをおこす。

僕もテイスティングルームでやろうと思うのですけど、その時にパイントいくら、うち酒税いくらと書いてやろうかなと思って。そういうちっちゃな活動かもしれないけど、蔵くらでも是非。ホップマンも後で僕がメニューに(笑)

多分そんな小さな飲み手からの活動のほうが、僕は大きなうねりを起こせると思っている。

僕らがやるとやっぱり利益を上げたいとか、直接なものと感じざれかねないので。もちろんその方向で動いていきたいと思っているのですけど、より飲む人に近いところでそういうことをやったほうが、世の中は動くんじゃないかなと僕は思っています。


Q.自分が好きなビールとはどういうビールですか?

えーっと、タップルームでベアード・ブライアンと居る時に、それを聞くとこう答える。「ビール?僕には四人の娘がいる。誰が一番愛しているのかって聞かれるようなもんだ」と。

つまり造ったビールは全部好きなんですね。

僕もこれから造っていくから、これがあいつが好きなビールだと期待を持って見ていただければ。

それが答えです。


【田代】田口さん今日はどうもありがとうございました。でも、これは締めの言葉じゃないんで。今回のビールはボタニカルビバレッジワークスさんとヨロッコビールさんと一緒に造っているということで、本当にヨロッコビールさんとは仲良くやっていると思うのですけど、先日、ヨロッコビールさんは設備を増設されるという話で、増設したらうちも欲しいですみたいな話をしたら「東京には送る気は全くないけど、ホップマンさんなら」と言ってもらえたんですよね。そういう、今回の話でも地域を大切にしてっていう。僕も茅ヶ崎に来て茅ヶ崎の人にビールを大切にしてもらってこういう場所で開かしてもらったのですけど、たとえば今回のイベントが茅ヶ崎ではなくて、僕が東京でやったらどうなのかなと。本当は後で聞けばよい話なのですけど。聞いてみたいなと思って。

なんだろう。地域性という言葉は僕の中に二つあって、物理的なヨロッコに近い湘南エリアとか、香川ですとかは当然あるのですけど、僕の心の中の地域性みたいなのがあって、田代さんは僕の地域に住んでいるんです。

どこかが問題じゃないんです。


Q.さきほどの話の中で意図的にというか酵母についての話だけをされていなかったのですが、麦・ホップ・水という話はされていたのですが、酵母に対する話をされていないのは、何か意図的なのか、それとも何かあるでしょうか?

ただ言うのを忘れていただけです。
僕がやっていく上で二つの製品ラインというのがあって、地域でふつうに割と既存のビアスタイルに近いものをケグで出すという話と、New Next Nippon Nomimonoをボトルで出すっていうのをきっぱりと分けようと思っている。

せっかくなので話させてもらうと、現状のブルワリーでは同じタンクで出来たビールを一部はケグに、一部はボトルにっていう詰め方をしていると思うのですけど、究極のことを言うとケグ用のスペックがあってありきで、ボトル用のスペックがあってありきだと思う。
それを分けたいと思っている。

その上で酵母も分けようと思っている。

とんがった部分では、自然発酵とかにも挑戦していきたいと思っていますし、それ以外のスタイルに則った部分に関しては、基本的に通常のブルワリーと同じような使い方をしつつ。でも、どこかで覚醒した時に切り替えるとか。もう、あそこはもう自然酵母しかやらないんだとか、そういう目醒めというのはあるかもしれない。

正直な話をすれば、最初は堅実に培養酵母でやりたいと思っています。


【田代】これで二部のトークは終了とさせていただきます。
田口さんどうもありがとうございました。
実はこういうふうにブルワーさんをきちんと呼んでイベントをするというのが、ホップマンではこの五年であまり無くて、鬼伝説の柴田さんを呼んで一緒に豆まきしたり。これはヤバイんですよ。床も豆だらけになるくらい。本当に派手に5kgくらい今年はやったんですけど。
後は湘南ビールの筒井さんが当たり前のようにカウンターに立っていたりとか。そういう感じのイベントはちょくちょくやっていて。
ブルワーさんはよく飲みに来てくださっていて、よくお会いする機会はあるかとは思うのですけど、こういうふうにビールを造っている人の思いだったりとか、クラフトビールの魅力を改めて話していただいて本当にありがとうございました。
今日もいろんな言葉がたくさんあって、うまくまとめて最後言えればなと思ったけど、なかなか難しいな。
すごい自分たちも頑張らなければならないなと感じた。
You are what you eat。フードもこだわりをもってやっていきたいな。
前回、三月に下北沢のほうでトークライブがあって話を聞かせてもらって、いろんな人に聞いてもらいたいという思いがあって、こういう機会をひらかせてもらったのですけど、改めてみんなで田口さんのプロジェクト、そして田口さんを応援できたらなと思いますので、皆様よろしくお願い致します。
そして、みんなで仏生山に行きたいですね。いつかみんなでツアーとかできたらなと思います。
その時はよろしくお願いします。
最後にビールなので、みんなで乾杯でトークライブを〆たいと思います。田口さんありがとうございました。乾杯!
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