明日、何を飲むか考える。(中編)

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前編に続き、どういうことを考えて四国でどんなビールを造るのか。

街とブルワリーとの関わり、そしてビールと大地の絆。

明日に向かって、何を飲むのか考えるきっかけになる中編です。


街とビール

僕がこれから移ってブルワリーを作る街なのですけど、それを紹介して街にブルワリーがあるとどんなに素敵かという例を示したいと思います。

僕が行く街は香川県高松市の仏生山というところです。

首都圏に対して、ちょうど茅ヶ崎とか逗子鎌倉とか、ここから田舎になりますよというような地域。だいたい真ん中から電車で6つくらい。

この街に温泉があります。五年くらい経つのですけど、この温泉はもともと仏生山で冠婚葬祭場を営んでいたとあるおじさんがいて、金沢大学の地質学をやっている先生が地球の磁力をいろんなところで調べるという研究をしていて仏生山を調べた時に、ぽろっと「仏生山は昔のクレーターの上にあるよ」と。
クレーターってことは一番下に水が溜まるよねということで温泉が湧くかもしれないと先生が言ったので、それを信じて周りの反対も聞かずに温泉を掘り続け、遂に五年前に温泉を掘り当て、仏生山温泉を作った。

幸いにも温泉を掘り当てたおじさんの息子が建築家をやっていて、横浜のみかんぐみという結構そのスジでは知ってる方がいっぱいいらっしゃるところなのですけど、ちょうど独立するタイミングだったので、自分がデザインするよということで、こういう素敵な建物をプロデュースした。グッドデザイン賞をとった温泉です。

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僕もヤッホーにいたので、長野に住んでいて温泉がすごくいっぱいあったので、マニアに近いくらい温泉に入り尽くしたのですけど、この温泉は正直言って日本で5本の指に入るくらいじゃないかというくらい素晴らしい泉質をしている。
普通、温泉の評価というのは溶存成分とか温度でするのですけど、温泉の成分を抽出する時に1Lあたりのミネラルの量で評価するのですけど、わりと良いなという所で3gくらいなんですけど、この仏生山温泉は12gくらいあって、めちゃめちゃミネラルの高いアルカリの温泉。更に炭酸がすごく含まれていて、入ると身体中が気泡で包まれるという最高の温泉。

僕はこの温泉に入って、ここの街はヤバイということで、最初のスライドでなんですけど、ここでブルワリーを作ろうと決めました。

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この街は温泉を中心にしているわけではないですけど、おしゃれな町屋のカフェがあったり。仏生山はそもそも高松藩。松平さんということは徳川家の血筋なんですけど、高松藩の菩提寺「法然寺」というお寺があって、そこの参道を中心にして栄えた結構古い建物なども残っている。かっこいい街なのですけど、こういう古い建物を活かしたカフェがあったりとか。

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当然うどん屋が徒歩10分圏内に3軒ぐらいある。香川だと普通なことらしいのですが、香川はうどん屋が700軒から800軒くらいの間にある。こないだの二月に丸亀製麺栗林公園店という大手のうどん屋さんが撤退するというくらい個人のうどん屋さんが強いという、本当にうどんの文化が発達したところです。僕がうどん好きというのも20%くらい含まれています。

あと、公園があったり古い町並みで大名行列などもやる街です。こういういろんなものがある街。二年前くらいからやろうとしているのが、仏生山の街ぐるみ旅館という取組みです。

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普通、旅館というのは温泉を中心として宿があって食べる所があってお土産屋さんがあってという形で、ひとつでまとまってやるのが旅館だと思うのですけど、仏生山は街ぐるみで、いろんな人が、いろんなやりたいことをやって。カフェをやりたい人がカフェをやって、レストランをやりたい人がレストランをやるという街そのものを旅館として見立てるような町おこしの形をしていて、ぼくはビール屋さんということで話が盛り上がって温泉好きということで参加することになったという経緯です。


醸造所と地域との関わり

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僕が仏生山という街に行くにあたって、普通ブルワリーを作るというとペールエール好きすぎてたまらないとか。今のビールはホップが足りないから僕は凄いホップが効いたビールを造るんだとか。ボヘミアンピルスナーを造るんだとか。そういう目的があってブルワリーを作るケースが多いと思うのですけど、僕は当然ながら職業としてのブルワーというのをすごく愛していて、ずっと続けたい職業だと思う。
そういう醸造所というものが主体的になる見方というよりは、さっき言った街ぐるみ旅館に参加するという形で、醸造所そのものが地域へのプレゼントになると良いなというような発想でやっている。

建物とかは古いものが多いので、それを使いながらデザインが溶け込むような周りと調和するような建物を作る。

あとは、ここに居らっしゃる熱心なビールファンの皆さんは必ず仏生山に来てくれると僕は信じているのですけども、そういう方々が街に来てくれる。うどんも食えるし行くか!みたいな。
ブルワリーを作るという経緯でご挨拶に行くと、香川はうどんやだけだからどうしようかと思っていたけど、ビール屋が出来るなら行くわという声をいただいたりして。それは凄く嬉しいことで、そういう方々が街に来てくれるということはすごく良いことだなと。

もひとつビールの特徴はお祭りで人を繋げるという意味でビールは欠かせないということで、シンプルですけど、この3つで醸造所は地域へのプレゼントになるんじゃないかなというふうに思って、そういう気持ちで行きたいと思います。


街にブルワリーがある利点

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街にブルワリーがある利点は、当然ブルワリーでビールを造るので飲めるというところですよね。

絶対ブルワリーがあったら友達に自慢するんですね。ビールが好きになると勝手にブルワリーにおしかけていろいろ聞いて、造り方がだんだんわかるようになってきて。

ここからは僕の現状の愚痴みたいになるのですけど、パーティーのときにちょっとサービングしに来てくれないかなとか。

あとは、うちでちょっと果物とれたから、夏みかんが取れたからビール作りなよとか。基本はやらない。基本やらないですけど、有名な大工さんというかたのスタイルはほぼ強引に持ち込むというか。ブルワリーのスケジュールとかは特に無視したかたちで夏みかん、柚子、みかん、梅とかを持ち込まれるということで、もうちょっとブルワリーのスケジュールを考えてくださいというところなんですけど(笑)そういうことが出来たりとか。

あとはビール好きが訪ねてくれるということで、交流が生まれるという意味で、ブルワリーが街にあると、こういう良いことがおきる。

ブルワーにとっては良いことかわかりませんけど、皆さんにとって、凄く良いことが起こる。もう、ホップマンの隣とか。隣の野菜屋さんがもしブルワリーになったら大変なすごいハッピーな状況になると思うのです。

でも一つだけ絶対これをやらないと利点にならないことがあって、それはやっぱり「美味しくて、いいビールだからそういうことが言える」ということ。
これがもし残念なビールだと、今までのお土産物の地ビールみたいにあまり誇りに思われないとか、一過性の通りすぎた人だけが買うだけとか、そういうことになってしまう。

美味しくて良いビール。これはちょっと抽象的ではありますけど、そうあるべきだと思っています。

ここからは、美味しさとか良いビールという抽象的な概念だけど、少しは拠り所を持とうよということで、僕が思う良いビールについて説明をしていきたいと思います。


ビールと大地との絆をとりもどせ!

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僕はよくプライベートでワイナリーとかを訪ねるのですけど、ワインというのは、ぶどう畑がわーっと広がっていて、ちょうど今くらいからいろんな作業をして、大事にぶどうが育って、実がなって、収穫して、絞って、秋ぐらいにとりあえずの形のワインができる。
とても農産物と飲み物の間の絆というのが強いしわかりやすいと思う。

でも、ビールってなんでそんなに、なんかよくわからないもやもやがずっとあって、僕もブルワリーをやる身としていろいろと考えた。

ビールの原料はご存知のとおり、麦とかホップとか良いお水。良い水があれば良いビールが出来ると思うのですけど、ここまではみんな文句なく大地との結びつきというのを感じると思うのですけど、間でこういうビール工場とか行って設備とかを見ると、なんか違うなという。

ビールのキャンペーンガールを見て、ビールの原料、麦とかそういうイメージっていうのが一回断たれてしまう。

なぜ麦を持ってなかったりとかホップはどこだ?とか、なぜ海に居るのか?とか造っている人がイメージとして農というか農産物であるというのを積極的に捨てちゃって、どう均質化しようかという話にばっかり行ってしまっている証拠だと思うのですよね。

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それを取り戻すという意味でも、たとえば小規模であるとか。
こういう伝統的な機械を守って使っているブルワリーを見たときは、皆さんもイメージの中でビールとホップと麦と水と、今手にしているビールとが結びつく。なんか手で混ぜてってなると印象があるという。
つまりはビールが工業的なイメージが付けられたのは、僕の考えでは大手のマーケティングとかイメージ戦略というものが凄く、そういうところがあると思うのですよね。

そういう意味で、それを取り戻したいというような思いがあります。

あとは伝統的な部分。
大手さんはやっぱり優れた技術力とか研究とかという部分で、ビール自体は文句がつけようのない良いものを造っていると思うのですけど、そういう一つの価値観ということではなくて。

伝統を探ってみると、ベルギーのクールシップっていうビールを冷やしつつ天然酵母を取り入れるようなところなのですけど、今の価値観でいうと雑菌が入ってビールが腐っちゃうかもしれないから止めましょうという話になる。でも、ベルギーのランビックとか酸っぱいビールをつくる上では、こういう工程というのは「こうじゃなければいけない」ということなんですよね。かつ、オーク樽で熟成してというのを必然的に行われている。

そこに対して大手がこういう価値観でしっかりやれっていうことは挟み込む余地がないわけであって、そういうものを多様性として守っていくのが僕らの仕事なんじゃないかなって思っています。

かといって僕らもただ、ダラダラとなんとなく造っているというのはいけないわけで。

水質調整のソフトとかで自分たちの水がどういう状態なのかを知って、どうすればどういう味に持ってけるかといのを計算する。こういうものを積極的に取り入れるっていうことも大事なことだと思っている。
伝統的な勘で造るっていうだけではなくて、かつ、機械化して楽をするということでもなくて。
より良くするという気持ちを持ちつつ。水を濾しとるフィルターとか、あとはIT技術で温度を知る方法とか記録する方法とか、そういうのは全然最新の技術に頼っていいと思うのです。

完全否定とかではなく、いろいろ受け入れながら「より良いビールを作ろう」と思うことが大事なんじゃないかなと思っています。


今まで生きていたなかで刺激を受けた言葉

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会社は社会を変える道具であるイヴォン・シュイナード(patagonia創業者)

これは鎌倉に日本支社があるアウトドアウェアのパタゴニアという会社の創業者が言っていることなのですけど、会社というのは利益とか、そういうことじゃなくて、社会を変える道具として見るべきであるというような言葉ですね。

これは僕もすごく賛同していて、僕もそういうふうにやっていきたいなと思っている。

たとえばですけど、社会を変えるということで、社会問題をひとつ挙げるとしますと、耕作放棄地の問題とか。

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ぜんぜんここで難しい話をするつもりは無いのですけど、とにかく増えているわけです。多分皆さんもテレビとかを見て知ってると思うのですけど、こういう問題があります。

もうひとつは、大手がクラフトに参入しますという話があります。

これは皆さんにとっては問題ではないのかもしれないですけど、僕らビールを造っている人間には少し問題があって、需給バランスというか。ホップとか麦は農産物で、急に増やせっていっても増やせるわけではない。という中で、造りたい人が、特に大手さんみたいに力を持った人が、じゃあ造りますということで、今までのビール造りより10倍ぐらいホップを使うような種類のビールを急に大手さんがいっぱい造るよという話になったときに、そのバランスがどうしても崩れてしまう。

たとえば、名前は伏せますけど、昔COEDOにいたU君というブルワーは「契約していたホップが、大手が入ってきて契約分が入ってこないって言われたんですよ」とか。
取引上で力が弱いとホップが確保できないとか。僕らにとっては結構重大な問題です。

そもそも輸入原料に頼りすぎた僕らにも責任があるのですけど。そういうブルワーとしての問題が発生しています。

「耕作放棄地」と「ビール原料の不足」という二つの問題をあげましたけど、じゃあどうやってそれを変えていこうかと考えたときに、僕がひとつ思いついたというか、ベアードビールからヒントを得たところが多大にあるのですけど、たとえばフレーバー原料に、柑橘とかフルーツを使えばいいんじゃないかということだったり、モルトとかのエキス原料は足許をみれば食べられなくなったお米とかがたくさんあったりとか。みんなパンを食べるようになってお米を食べないよという話があったりして。
酒米とかだとブームで山田錦が無いとかそういう話になっているみたいですけど、食用米に関しては割と余っていたりとか、そういう現状があるわけで、そういう二つの問題の間に、なにか都合を合わせれば上手くいくような事情がある。

じゃあ、ホップの代わりに柑橘のフレーバーを使ってあげたり、モルトの代わりに麹を使ってあげたりとか。今日も湘南ビールさんの麹を使ったビールなんてものありますけど、それはとても良いことだと思っていて、足許を見れば日本古来とか、日本由来の地場で生産したものっていうのが、ぜんぜん使えるんじゃないか。

そういう意味では、クラフトブルワリーがホップではなくて、こういうフルーツとかに目を向けた時に耕作放棄地の解決のひとつになるのではないかと。

あと、耕作放棄というのは、そもそもの問題として高齢化とか働く人が少なくなるという問題もあるのですけど、今の農業はちょっと乱暴な言い方をすると、商品価値を高めるために、僕にとってはして欲しくないことなんですけど、変に見た目を綺麗にするために手間をかけているという部分がある。

これがもしビールに使うとなればフレーバーがあればいいので、そんなに傷とかも気にしなくていいし、より使ってあげられるものが増えるんじゃないかという考え方でやれば、農家さんとブルワリーの間に、お互いすごく良い関係が築けるし、社会の問題も解決できるんじゃないかなと思っています。


木桶

少しだけ話がそれるかもしれないのですけど、いい話です。

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これは小豆島のヤマロク醤油さんという醤油屋さんで、左下は山本さんという若旦那ですね。木桶で醤油を作っていて、この醤油蔵に大学の先生が来て酵母を採取したら、酵母だけで400種以上の微生物が住んでいるという貴重な状態。ここには菌の生態系が存在しているのですけども、これがステンレスタンクの工業的な造ではできない。

木桶が大事なひとつのキーワードになってくる。

木桶に使っている木が右下の写真で、この木が僕は林業科出身だから言うのですけど「板柾目」という。ちょうど液に触れる側に心材という木の赤みが触れるようになっていて、ここが水に対して強い。これを内側にして作るのがとても大事なのですね。ところが今、山の管理がずさんで、こういう良い板柾目の木材がなかなか手に入らなくなってしまってきていて、そういう問題も抱えています。

この桶を作る会社もどんどん廃業してしまっていて、今は大阪の堺に一軒だけっていう話です。この山本さんという人は一念発起して、醤油も造りつつ、俺が木桶を作るんだということになって、この人は本気で桶作りを習いに行って、今は習得して、いろんなところに桶を売るということも始めています。

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桶は手入れすればだいたい100年くらい使えるらしいのですけど、山本さんは100年後、木桶の醤油を子供達が食べられなくなるのは凄く残念だということで、だったら俺がやるということで木桶作りに乗り入れた。

これをビールに置き換えて言うとどういうことが言えるかというと、ヤマロクさんの醤油を買うということが木桶を守るということに繋がる。
さっき言ったように板柾目という木材を得ようということが、左上の北山杉という大事な育て方をされた杉の林なのですけど、結果として山を守るということに繋がるということになる。

だだ、普段は刺身に醤油を付けて食べるという意識なのですけど、それが山を守れるのであれば僕はヤマロクさんの醤油を選ぼうということです。

あと、ヤマロクさんと話をしたときに、それまで僕は醤油を小皿に無駄出ししていた。皆さん割とそうだと思うのですけど、余って捨てるというのが普通だったのかもしれないですけど、その話を聞いてから醤油をばーって出すことが出来なくなってですね、ものを大事にするという気持ちも一緒に教えて貰った。

僕もそういうふうなもの作りがしたいと切実に思いました。

なんなら、木桶を買って木桶でビールを造りたいなと考えていて、本当にやろうと思っています。

そういう意味で、それができれば山を守れる。そういう役割りをもったビール造りができる。それを声高に言わないかもしれないですけど、物のチョイス。皆さんがいつも買えるものをちょっと変えるという。
方向性としてこういう違いを生むということで、僕は会社をつくって社会を変えたいと思う。

もし皆さんが賛同してくれるのであれば、そういう風に作られたものを選ぶことによって社会って変えることが出来るんじゃないかなという風に思っています。

あとはエネルギーのチョイスとかですね。ソーラー発電を選ぶという選択も出来ると思う。

僕らがビールを造るうえで水がとても大事な存在で、水がないとビール造りは出来ない。普段は蛇口をひねれば出てくる水ですけど。

ベアードビールの水源は井戸水なんですね。昔キャンプ場だったところを転用している水源なので、タンクがちょっと小さくてですね、ごくまれに断水したりするんですね。家にいれば誰かが水道を供給してくれていて、役場に文句を言うと済む話なのですけど、実際そうやって水源の管理を自分自信でやってみて、水が来るというのも本当に尊いことなんだなと実感を持った。

ブルワリーをやるのであれば、そういう水の大切さとかを一緒に訴えていけたらなと思っている。そういう思いっていうものを、もし共感できるブルワリーがあるのであれば、一緒にそういう訴えっていうのもやっていって、皆さんがそういう物の選び方をもしするようになったら、ものすごく世の中が豊かになるんじゃないかなという風に考えています。


You are what you eat

ここでもう一度見ていただきたいのですけど。

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さっきと同じ言葉です。あなたが食べているものはあなたそのものです。

同じ言葉なんですけど、さっきこの言葉を見たときは多分ビールを飲んで水分として体に取り入れて、うーん確かにそうだよなというぐらいに思ったと思うのですけど。

こういうふうに説明すると、おそらく食べたり飲んだりする物それぞれに、ものすごく深い背景とかストーリーがたくさんあって、そうやってちゃんと選ぶということが皆さんの体にとっても重要なことであるし、実はそれが世の中とか、そういうものをどうするかという意味でも大事なことなんですね。

これをあえて今、クラフトビールをどう定義するかと言われている時に、僕はクラフトビールというものを「こういうことを考えてビールを造り、皆さんに大事に届ける奴らでいたい」と提案してやっていきたいと思います。


僕にも夢があります。

けっして、メルセデスベンツに乗りたいとか、ファーストクラスでグアムに行きたいとかではなくて。

できれば当然利益は得たいと思うのですけど、これから日本だけじゃなくて世界中で人口の縮小とか、経済の話で言うとどちらかというと縮小傾向に向かっていく中で、今の経済価値って、なんで右肩上がりになるよっていう前提で進めているのだろうか?という疑問がずっとあった。

そこに対して利益を拡大とか拡張っていうことに使うのではなくて、ちょっと抽象的ですけど、充実させるために使いたいと思っています。

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そんな中でたとえば自然エネルギーに切り替える。ソーラーパネルを入れたり、小さな水力発電をしたり。今ままで誰かが作ったエネルギーに対してお金を払ってエネルギーを得るというのが普通なのですけど、自分でエネルギーを作って、その分費用がかからなくなると利益が得られるという意味で、売上を増やすのではなくて、どうやって利益を得るかというのを真剣に考えていく必要があるかなと思います。

これはあまり言われていないことなのですけど、僕はブルワリーというのが災害が発生したときに役立つ存在だと思っている。ブルワリーというのは、お湯を貯める必要があったり、煮炊きするために燃料を蓄えていたりとか、水をタンクで貯めていたりとかしているので、いざ災害が発生したときに地域にとってすごく役立つ存在。なんならモルトとかを頑張って食べれば食料にもなるよという話はあるかなと思います。

あとは、自社農園が欲しいですね。さっき言った通りワイナリーとかに遊びに行くと、いつも恥ずかしい思いで帰ってくる。

ビールは基本的に原料を購入して、スケジュールにあわせて造りたい時につくれるような産業なんですけど、ワイナリーの人たちは、だいたい今頃から作業をはじめて、夏は雨とかの中で作業したりとか、ぶどうの実を一生懸命育てて収穫して、やっとワインを仕込める。

つまりは僕らがやっている仕込みを一年を通してやっているということなのですよね。

僕らも決して手を抜いてやっているわけでは当然ないのですけど、ワイナリーの人と話すと、こないだ話したのは50歳くらいのかただったのですけど「僕なんてあと仕込めて15回くらいだからな」と言うわけですね。「頑張っても65歳くらいまでしかできないから、15回くらいできれば格好いいかな」なんて言ってたんですけど。

かたや僕らは年間100仕込みくらい、やろうと思えばできるわけで、仕込みにかける意気込みっていう部分に、すごく憧れと言うか、逆になんかちょっと恥ずかしいという思いがある。

そういう思いを、できるだけ自分でもやりながら知りたいという思いもあって、そういうためには農園というのは凄く大事な存在なんじゃないかなと思う。すごく欲しいと思っています。

あとは意外もしれないのですけど、販売エリアというものを縮小したい。
これはどういうことかというと、ちょっと間接的な話になるのですけど、ただ縮小すると貧乏になっちゃうので、そういうことではなくて。

僕がやりだしたブルワリーとか、他の人もいろいろとブルワリーを立ち上げて、地域地域でビールというのは飲むという常識だとか文化が育って、ビールはそんなに遠くから取り寄せるものでは無いよという常識が育てば、おのずとエリアと意味では、そんなに遠くにビールを出さなくても商売としてまわっていくのではないか。

そういうビール文化の成熟になればいいなと思っています。

ビールというのは、ドイツとかでは煙突が見えないところでは飲むなとか、ビールに旅をさせるなとか移動させるなという諺があるくらい。
やっぱりフレッシュで飲んで欲しい。

この中にはビールを輸入してらっしゃるインポーターのかたとかもいらっしゃっていて話し辛いのですけど、理想論を言えば、そうなんじゃないかなっていう僕の考えです。

そういうことを重ねていって、最後にまた「今日より少しよい明日を迎えたらいいな」というふうに思って、ブルワリーはまだ影も形もないですけど、そういうブルワリーをつくって美味しいビールを造っていきたいと思っています。

以上です。

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後編はQAコーナーです。

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