Botanical Beverage Works(2)

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前編に引き続き、Botanical Beverage Worksのこれからのことです。

前編はこちら

【田口】
やっと本編が始まるわけですけども、岡さんとか地域のかたに、いきなり来てやるぞ!と言われても困ると思うので、想いというか、ちゃんと考えをあらわそうと思ってプレゼンを作った。


なぜ始めるのか?

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  • 市場は右肩上がり(一過性のブームか否か判断できないタイミング)
  • 内容はマンネリ化(ものまね、レシピいじりから脱していない。要イノベーション)
  • 新しいユーザーの興味とマスコミに支えられている(持続性に疑問)
  • 大手参入(上空にはたくさんのトンビが舞っている)
  • アイデンティティが確立されていない(マーケットまかせ)

【田口】
今、クラフトビールというのは凄く、先週のテレビとか凄かったんですけども、大手が参入とかそういう状況にあって、僕のようにゼロから立ち上げると、もちろんお金もそんなにあるわけではない。ブームというのは良かれ悪しかれ、クラフトビールを知ってもらえるという状況についてはすごくいい。テレビをつけてクラフトビールとは?と、特に7ch(テレビ東京)のかたとかが、一生懸命やってくれていて、そういう意味で、僕がそこに対して力を使う必要はなくて。もっとより深く、マニアになっちゃったとか、寝ても醒めてもビールのことが気になる人が、もし来ていただいたときに応えられるような立場でいられるという意味で。ブームに乗じて儲けてやろうという考えではなくて、僕がやりたいことを整理したときに、すごく良い状況なんだなと。
感謝しながら、キリンさんありがとうと言いながらやっていこうと。

ちょっと言い方が悪いんですけど、そのクラフトビールってやつが僕の中ではマンネリ化しているんじゃないかと。これからクラフトだ!という時に、そんなことを言うひねくれ者はどこのどいつだというふうになるとは思うんですけども。
たとえば、アメリカのオレゴン州ポートランドっていう都市とかは、ちょっと歩けば香川のうどん屋のようにビール屋がある街で、そこで作られているものはトンがっていてキャッチーでわかりやすいビールがいっぱいある。そういったものをどうしても持ってきて日本で再現するという方向にいきがちなのかなと。

じゃあ、日本のオリジナルって何なんだろうと。アイデンティティという部分なんですけども、作っている人がこういうのがあると良いと思うんですとか、いろんな理由があって、ただその仕事としてビールを造りたいから作るというはずじゃないはずなんですよ。

ブームとかで忙しくなると、人ってそういうのを考える暇がなくなって、なんかこうビールを楽に作ろうというところがあるんじゃないかと。

ちょっとマゾヒスティックなんですけども、僕は苦しみながらビールを生み出していきたい。そのときなんか新しいものが誕生するんじゃないかという期待もあって、そういうふうに思う。

新しいお客さんとか興味とかが、7chに支えられているブームというのはやはり一過性の部分もあって、残念なことに忘れ去られちゃう可能性がある。
そういうのではないクラフトビールというのを、どうやったら作れるんだろうってのを考えて、いろいろと思っているところがある。

今のクラフトビールブームというか、クラフトビールの中で僕がリスペクトしている、いいなと思うブルワリーをいくつか紹介したいと思います。


事例紹介:志賀高原ビール

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http://www.tamamura-honten.co.jp/frame-beer.htm

【田口】
志賀高原ビールという会社は、社員自らが全部ではないですけどもホップを自分たちで育てたりとか、そばの実とか、大麦とかも自分たちで育てて、それをお客さんたちと一緒に収獲して、ビールにする。特に、ホップは夏、お盆過ぎくらいから収獲が始まって、ビールが最低でも一月かかるので、だいたい秋口くらいにハーベストブリューといって、採ったばかりのホップを使って作ったビールなんかを出している。
僕が思うのはナショナルブランドのビールはコマーシャルとかのイメージで年中同じものが出るし、季節感というのが感じられない。
僕が働いていて、よくお店さんとかに言われるのが、製品のブレというか。当然あまりにも明日黒かったものが今日はこういうアンバーカラーだったら、そりゃダメだと思うんですけども、もともとよく考えるとビールだって農作物で作られている。
良い例だとワインとかという話をすると、皆さんすすんでビンテージがどうだとか、今年のぶどうはどういう出来だったとか。そういう部分が自然と頭のなかでつながっているのに、ビールというのはどうしても畑とビールというものの間に工場というのがバンと分断するために入ってしまっている。そういうものをもう一度つなげてあげる必要があるんじゃないかなっていうのが僕の考えで、そういう意味で志賀高原ビールさんはお客さんと収獲したりしている。ワイナリーとかもボランティアとかワイン倶楽部を作って収獲して。何が良いって自分が収獲したものを買わないわけがない。そういうふうに愛着を持ってビールを飲んでもらうことが、クラフトというものをブームで終わらせないひとつの理由になるのではないかと考えている。そういう意味では凄く参考になる。

もうひとつは、スノーモンキービアライブという先週ちょうどあったんですけども、普通ビールイベントって夏のものなんですけど、どうしちゃったのか冬の雪の中でビールイベントをやるっていうところなんですけど。
でも、この音楽とクラフトビールをくっつけるとか。
今までビールイベントというとビールだけがあって、イベントの中のイベント的なことって乾杯くらいしかなかった。
アイドルをよんで人を集めればいいというのも違うなという思いがある中で、こういうしっかりした音楽としっかりしたフードとしっかりしたビールというものを融合させてイベントをやる。そうふれば冬の志賀高原。標高もあるし、寒い中でも凄くお客さんが集まるし、みんな史上最高のイベントだと言いながら帰るようなイベントができる。
ビールと何かの結びつけを作るという意味でも凄く良い活動をされている。


事例紹介:ヨロッコビール

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http://www.yorocco-beer.com/

【田口】
言わずと知れた今飲んでらっしゃるヨロッコビールですけども、見ていただいている鍋。僕は小さいことは良いことと思っていて、それで食べていけないとかになっちゃうといけないのですけど、こういう目の行き届く範囲で一人でやっているので、自分の思ったままのビールというのが作れるし、そういう意味で本当のクラフト。
友人でこうやってビールを作る。

工場はBeer&Breadといって、ここもB&Bなんですけど、この2つはうちの外人上司とかも言うのですけど、パンとビールは友達だと。麦を発酵させて出来た意味で。結びつきもそうだし。

もうひとつは地域。逗子、鎌倉でしかほぼ飲めない。
そういった中でやっていく新しい、本当にローカルに根ざした、ポートランドにあるようなブルワリーだと言える。
デザインなども友達にやってもらってかっこ良く出来て、このイラストのかたは結構有名なかたらしいんですけど、有名な人に報酬はビールでやってもらったり。見習いたい。

【ポン】
いいですね。これからの時代ですね。

【田口】
そうすると税金がとられない。
カウンターカルチャーの側面もある。


事例紹介:麦雑穀工房

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http://www.craft-beer.net/zkm.html

【田口】
こちらは麦雑穀工房さん。埼玉の小川町というところにあるんですけども、ここは先駆的に自分たちで農作物を栽培して、志賀高原も一緒なんですけども。
もともと、こちらのご夫婦のお父さんが大学教授で始められたんですけども、本当に麦を育てるところからはじめてやるという小規模なブルワリーです。
パンを作ったり、直接タップルームのようなものを作って、お出ししたりという意味で、家族でやってく小規模なという意味では良いブルワリーですね。


事例紹介:ベアードブルーイング

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http://bairdbeer.com/ja/

【田口】
もうひとつは、我らがベアードブルーイングですけども、もともとベアードさんというアメリカ人と奥さんが日本人なんですけども、このタップルームという沼津の港にある厨房で30Lの鍋から初めて、奥さんがパブの面倒をみるというかたちで始めた。
ここはサクセスストーリーとして、いろいろあるんですけども、最初は下に居酒屋が入っていて、上で30L作っていたら、下が潰れたので借りようと。250Lの釜を買ってきて、手狭になったので次にいこうと。沼津の別の場所で、上に大家さんが住んでいるというなかなかすごい感じで。もともと「たこや」という水産加工場だったそうで、なかなかワイルドな工場だった。
今はすごくおおきな日本でも5本の指に入るような近代的なブルワリーに成長した。

家族経営でやっていて、信念をもって夢を追い続けて大きなクラフトブルワリーを作ったという、ちょっとお金を持っている人がビールを始めようよというのではなくて、こうあるべきだという意味で参考にしている。


何者なのか?

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  • クラフトビールを中心とした飲料の製造会社
  • カウンターカルチャー
  • 畑と食卓のつなぎて

【田口】
僕が作る会社は何者なのか?というと、クラフトビールを中心とした飲料の製造会社。クラフトビールという定義は、今は詳しい人の間ではクラフトってなんだっていう話とか議論になっているんですけども、クラフトビールというのは、もちろん僕の育ってきた環境なのでそれは造っていく。そこの枠にとらわれない何か新しいものを。

ボタニカルビバレッジという、農業とか自然とか地球といったものと、みんなが飲んでいるビールというものが直接的につながればいいなという意味。
名前としてクラフトビールというともめちゃったりもするんですけど、キリンがクラフトって言ったとか。

【ポン】
ビールの会社だけど麦とかを使わないのは凄く珍しい。

【田口】
そうですね。ブルワリーではなくてワークスにするのは、ただの僕がただのひねくれものだから。
ボタニカルは植物のということ。
クラフトビールというと麦とかホップというイメージがあるのですけども、ここに社会問題というのがからんできて、クラフトビールは盛り上がったのは良いけど、ホップとかって農作物なので数に限りがある。最近、よそのブルワリーで聞いた話なんですけど、契約していたあのホップが、とある大手が入ったことで契約が破棄されて、僕が頼んだのが入ってこないとか怒っているブルワーがいたりとか、そういうものに巻き込まれたくないという思いも正直ある。
そのとき、ホップはなんのために使っているのか。当然ブルワーなのでよくわかっているんですけど、ホップである必要があるのかなとか考え始めて。
じゃあ、何を使えばいいんだろうというときに、柑橘などでフレーバーとか付けることができると思う。
まるっとホップの替わりにではできないと思うけど、ホップも人気者がいて争奪戦になる。
ビール界の常識として、柑橘の香りがするホップっていいよねって言ってたんですけど、柑橘系の香りのホップとかじゃなくて、柑橘を使えばいいんじゃないかなと。
系とか言ってないでというところに思い至った。
ホップは苦味をつけたりとか、泡持ちを良くしたりとか、そういう意味でホップは大事な役目があり、それをないがしろにするわけではないのですけども、ホップが争奪戦になれば当然相場もあがって、皆さんの手に届く頃にどうしても価格がのっかるのが果たして皆さんにとって良いことなのかどうかというのももちろんある。
仮に柑橘サイドにたつと、どんな問題があるかというと、日本の農地は耕作放棄地とか、僕のイメージですけど、みかんとか段々畑で年寄りになってとても収獲ができないなど、やめたっていうのをどうにか使えないかを考えているうちに凄く有意義なことなんじゃないかという思いが。
気付いたら柑橘中毒者に。家でもむいたりとか、ちょっとおかしいなとは思うんですけども。

柑橘の香りというのは人を元気にする力がある。
なんかこうフレッシュというイメージがあって、柑橘を使うことが農家さんにとってももいいし、皆もそれで少し安く買えるかもしれないし。

明日を今日より少し良くするために考えた時に、ひとつの答えになるかなと言う思いがあってボタニカルビバレッジ。
そういうものを強調したいときにクラフトビールを中心にした、クラフトビールの会社じゃなくて、中心とした飲料の会社でいたいという意識が強く。

【ポン】
そこに思いがあるというわけですね。

【田口】
そうですね。あとはカウンターカルチャー。
さっきから税金をどうこうっていう話ばかりしているけど、ビールはお酒なので税金というもので凄く管理されているところもあってですね、酒飲みというのは高額納税者なんですね。そういう意味で税金の問題を明らかにしたい。僕がお店を作ったときには、消費税とうち酒税いくらと書いて、怒られるかもしれないが、ぜひやりたい。
皆さんが知らないうちに何かされるのは僕は凄く嫌なので。
そういうものを社会問題としてアピールしたい。

もうひとつは、畑と食卓のつなぎてとして、工業的な部分というのを一度戻して、畑からビールまで直接つながっているというのをお伝えしたい。
そういう会社を作ります。


コンセプトは?

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  • 自然(素材)
  • 自然(無理をしないということ)
  • 人の心理を根底から心地よくする
  • 無駄は敵だ
  • 地域的な必然性へのこだわり

【田口】
コンセプトは自然。
素材は自然なものをこだわって。
無理をしないというか、やり方としてナチュラルというか自然という意味。
あとは人の心理的なものを心地よくするという意味で。
ビールは酔っ払ってハッピーになれるんですけども、このビールを手にするのというのは、なんか誇らしいとか自慢できるとか、そういう付加的な部分をつくっていきたい。

無駄は敵だっていうのは、何で書いたか忘れちゃいました。

地域的な必然性へのこだわりというのは、たとえば香川にながらブルーベリーのビールとかは作らないよという。それは無理をしない、自然というところにも引っかかってくるんですけども、気持よく香川だから柑橘ですよところの心理を根底からスッと心地よく収まる、そういうものを上手く絡ませていきたいなというコンセプトです。


地域との関わり

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醸造所が地域へのプレゼントになるようにする

  • デザインは周りと溶け込むようにする
  • 残渣を堆肥化して還元する(食べる農園にて)
  • 熱心なビールファンを街に呼び込む(外貨獲得)
  • 行事や祭りに奮って協力する
  • 配送ツールや倉庫など共有可能な通販リソースの共有化

【田口】
僕が昔居たアウトドアのアパレルのメーカーがあるのですけども、そこがお店が地域へのプレゼントになるように作るのが大事なんだと創業者が言っていて、本当に僕は心からそう思っている。
ブルワリーとテイスティングルームという飲む場が地域との交流の場になれば良いし、デザインという意味でかっこいいものが自分の街にあると自慢できるし、友達においでよと言う理由にもなるし。

ビールは廃棄物が有機物で自然に優しい。堆肥化して食べる農園で使う。
食べる食堂みたいのをやるらしいんですけど、残滓とかを一緒にして堆肥にして、農作物を作って、それをまた使ってという、仏生山でぐるぐるまわるようにですね。

ちょっと嫌らしい書き方になるんですけど、東京から皆さんに来て頂いて、仏生山という地域として見た時に外貨獲得する。そういう意味でも、ワインとか山梨で熱心にやってらっしゃるんですけどもワインツーリズムみたいな形で、一人じゃできないですけど温泉があって、ビールがあるという魅力的なまちづくりを。

あと、配送ツール。仏生山は雑貨屋さんがオープンしたりとか、これから面白いことをやっていくかたが多いので、配送作業とかみんなで一緒にやりましょうと。

【ポン】
地域でまとめてね。地域でアマゾン化していく。

【田口】
仏生山のアマゾンを造っていきたい。


将来の展望

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利益を拡大・拡張に使わない

  • 自然エネルギーへの切り替え
  • 災害時の拠点(業種的に水・燃料を備蓄しやすい)
  • 自社農園
  • 販売エリアの縮小(地域内でより多く)

  • 飲食店の運営
  • ビール販売の利益構造を改善
  • 一貫したプレゼンテーションとブランディング
  • 販売エリアチャンネルを集約
  • 仏生山のAm͜a͉zonを作る


    【田口】
    基本的に僕は尊敬しているアウトドア会社の創業者の話で、もうひとつあるのが、会社は社会を変える道具であるという理念があって、僕も本当にそう思っていて、会社っていうのを使って何をしたいんだろう?って一生懸命考えた。
    そんなにメルセデス・ベンツに乗りたいとも思わないし、いい服を着たいとも思わないし、ほどよく食べてほどよくお酒を飲んで寝れたらいいやという中で会社を作ったらどうするんだっていうところで、いままでの経済の必ず成長してリターンがあってっていう仕組みだと全然しっくりこなくて、会社をどう使おうかと思った時に、もちろん事業をやる上で自然に対して負荷をかけないとか。

    あと凄く思ったのが、ビール会社ってお湯を貯めたりとか燃料とかを、ビールを作るために備蓄するので、もし災害とかがあった時にお水を地域の人に提供するという災害拠点にもなりうるし、自社農園とかそういうものをやっていくと、やっぱり短絡的にはできなくて、どうしても一生かけてやる仕事だなというところで、そこに誇りをもって実際にビールを作っているし、新しいクラフトビール会社というのが、こういう災害とか自然エネルギーとか、そういうファンクションを持ち出すと、そのときやっとクラフトビールというのは大手と違うんだよと、やっとそこで言えるようになるんじゃないかなと思うので、クラフトビールのみんなのためにも、こんなことを言うと大げさかもしれないし、何言ってんだと先輩方にも言われるかもしれないけど、そういう方向に行こうぜっていう船頭をしたいなというアイディアは凄くありますね。

    やり始めてすぐに出来ることもあって、こういう災害時の拠点とかは宣言すればいつでも出来る話しだし、そういうブルワリーが潰れたらしょうがない話なので、そういう防災意識を持った造りにすれば、すぐにそういった役割は持てる。
    自然エネルギーを使うというのはちょっと収益との相談もあるので、これをやっていくんだという目標が凄くあるので、ここに向かって頑張っていこうという意味では、こういうのはアイディアが尽きない限りはずっとやっていけるんじゃないかなという自信になっている。

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